こんな人におすすめ
生産関数として、ある程度、経済学を学んだ方ならば、コブ=ダグラス(Cob-Douglas)型生産関数を見たことがあると思います。
そして、コブ=ダグラス型生産関数は先験的に与えられることが多いと思いますが、一応は導出方法があります。
そこで、
「コブ=ダグラス型生産関数の導出方法を知りたい」
「数学的に、どのようにコブ=ダグラス型生産関数を求めたらいいの?」
という方のために、本稿を書きました。
数学的ですが、むしろ「数学的な導出方法」を知りたいという方のために書いてます
このようなことを知りたい方や疑問をお持ちの方に、おススメの投稿となっていますので、是非ともお読みいただけたらと思います。
コブ=ダグラス型生産関数について
本稿を読まれる方は、たぶんコブ=ダグラス型生産関数について、ご存じの方がほとんどだと思います。
(知らない方は、そもそも興味も持たないのではという感じです)
ただ念のため、コブ=ダグラス型生産関数について、説明しておきますと、生産関数を特定化した場合の1つとして、コブ=ダグラス型生産関数があります。
産出量を $ Y$ 、技術力を $ A$ 、資本を $ K$ 、労働力を $ L$ としたとき、次のようなものです。
$ Y = A K^{\alpha} L^{\beta}$
いくつかある生産関数の1つであり、対数をとれば、線形化できるなど、便利な生産関数です。
(他の生産関数については「経済学における生産関数の種類」を参考にしてください)
1つの独立した生産関数とも言えますが、他の生産関数との関係を考えたとき、CES型生産関数から、このコブ=ダグラス型生産関数を導出できます。
導出方法
まず、CES型生産関数を考えると、次のようになります。
$ Y = A [\alpha K^{-\rho} + \beta L^{-\rho}]^{-\frac{1}{\rho}}$
コブ=ダグラス型生産関数は、このCES型生産関数において、$ \rho=0$ の場合です。
この式の対数をとると、
$ \ln Y = \ln A – \dfrac{\ln[\alpha K^{-\rho} + \beta L^{-\rho}]}{\rho}$
となります。
ここで右辺第2項がややこしいので、この部分をいったん次のように定義します。
$ E = -\dfrac{\ln[\alpha K^{-\rho} + \beta L^{-\rho}]}{\rho} \qquad \cdots \qquad (1)$
そうすると、上記の式は、
$ \ln Y = \ln A + E \qquad \cdots \qquad (2)$
となります。
ここで $ (1)$ 式の$ E$ について考えると、$ \rho=0$ のときには、右辺第2項の分母は0になってしまいます。
そこで、この式について、ロピタルの定理を使うと、
$ E = – \left[ \alpha \dfrac{dK^{-\rho}}{d \rho} + \beta \dfrac{dL^{-\rho}}{d \rho} \right] \div \left[ \alpha K^{-\rho} + \beta L^{-\rho} \right] \qquad \cdots \qquad (3)$
となります(ここで、ロピタルの定理を使うのが一つのポイントです。)。
ロピタルの定理
$ \displaystyle \lim_{x\rightarrow a} f(x) = \lim_{x\rightarrow a} g(x)$ のとき、$ \displaystyle \lim_{x\rightarrow 0} f'(x)/g'(x)$ が存在すれば、
$ \displaystyle \lim_{x\rightarrow a} \dfrac{f(x)}{g(x)} = \lim_{x\rightarrow a} \dfrac{f'(x)}{g'(x)}$
が成立する。
ところで、
$ \dfrac{d K^{-\rho}}{d \rho} = – K^{-\rho} \ln K \quad , \quad \dfrac{d L^{-\rho}}{d \rho} = – L^{-\rho} \ln L \qquad \cdots \qquad (4)$
が成立します。
急に$ (4)$ 式が出てきますが、ここも一つのポイントです。
$ z=x^{-\rho}$ を定義し、対数をとると、$ \ln z = -\rho \ln x$ となります。
これを $ \rho$ で微分すると、$ \dfrac{d \ln z}{d \rho} = \dfrac{1}{z}\dfrac{d z}{d \rho} = – \ln x$
であり、
$ \dfrac{d x^{-\rho}}{d \rho} = – z \ln x = – x^{-\rho} \ln x$
となります。これを $ K \, , L$ で置き換えれば、上記の式が得られます。
そこで、$ (4)$ 式を $ (3)$ 式に代入すると、
$ E = \dfrac{\alpha K^{-\rho} \ln K + \beta L^{-\rho} \ln L}{\alpha K^{-\rho} + \beta L^{-\rho}} $
が得られ、$ \rho = 0$ から、
$ E = \alpha \ln K + \beta \ln L$
となります。
これを $ (2)$ 式に使うと、
$ \ln Y = \ln A + \alpha \ln K + \beta \ln L$
となり、対数を戻すと、コブ=ダグラス型生産関数が得られます。
$ Y = A K^{\alpha} L^{\beta}$
まとめ
正直、ロピタルの定理を使ったり、途中の式変形がややこしいです。
(なお、途中の引用部分は、コブ=ダグラス型生産関数の導出にあたり、ポイントになっています)
本稿はコブ=ダグラス型生産関数の導出方法の説明ですが、少なくとも、コブ=ダグラス型生産関数は、CES型生産関数におけるパラメーター$ \rho=0$ の場合ということは覚えておく必要があります。
なお、コブ=ダグラス型生産関数に関する問題・例題も別に書きましたので、見てください。
参考
西村和雄『ミクロ経済学』