概要
「72の法則」とは、ある金利(複利)のとき、元本が倍になるような年数を簡単に計算できる法則です。
式としては、次のようなものになります。
年数(年) = 72 ÷ 金利(%)
例えば、金利が5%のときには、次のように、14.4年で元本が2倍になります。
72 ÷ 5 = 14.4年
また、金利が2%のときには、次のように、36年で元本が2倍になるとされます。
72 ÷ 2 = 36年
なお、ここで72という数字が使われていますが、代わりに70を使って、「70の法則」と言われたりもします。
実際の数値との比較
そしたら、実際にこの法則と数値がどれだけあっているのでしょうか。
計算すると、例えば、次のような数値になります。
金利 | 72の法則 | 実際の計算値 |
---|---|---|
必ずしも一致しているわけではありませんが、おおよそ近い数値であることが分かります。
導出方法
なぜ、このような法則が出てくるのでしょうか。
数学的に導出方法を説明します。
導出方法1
元本を $A$ 、金利を $r$ 、年数を $n$ 、$n$年後の元本の倍数を $b$ とすると、
$b A = (1+r/100)^n A$
が成立します。
$A$ はキャンセルでき、対数化すると、次式が得られます。
$\ln b = n \ln (1+r/100)$
そして、対数部分に関して級数展開をすると、
$\ln b = n \cdot \left[ r/100 \; – \; \dfrac{(r/100)^2}{2} \, + \, \dfrac{(r/100)^3}{3} \; – \; \dfrac{(r/100)^4}{4} \, + \, \cdots \right]$
となります(対数の級数展開については「対数の近似式について」を参照してください)。
$(r/100)^2/2$ 以下の数値には非常に小さいので、省略すると、次のような近似式が得られます。
$\ln b \simeq n \cdot r/100 $
そして、これを式変形すると、次式が成立します。
$n = 100 \times \dfrac{\ln b}{r} \qquad \cdots \qquad (1)$
2倍になるときには、$ b=2$ なので、$ ln \; 2= 0.69314$ から、
$n = 100 \times \dfrac{0.69314}{r} = \dfrac{69.314}{r}$
となり、69に近いような数値を金利 $r$ で割れば、$n$ 年で2倍になることが分かります。
このとき、69ではややこしいので、70という数字を使って「70の法則」と言われたり、3で割りやすいように72という数字を使って「72の法則」と言われたりすることになります。
導出方法2
連続時間の複利計算においては、次のような式があります($R$は少数表示の金利)。
(この式について知りたければ、「連続時間の複利計算の式と導出方法」を見てください)
$b = e^{Rn}$
ここで、$R=r/100$であり、この式を対数化すると、
$\ln b = (r/100)n$
となり、$(1)$式を導出することができます。
他の法則
$(1)$ 式を使えば、2倍になるような「72の法則」だけではなく、5倍になるような法則、10倍になるような法則が得られます(法則の部分について、近しい数値でもっともらしく述べています)。
倍数 | $ \ln b$ | 法則 |
---|---|---|
例えば、40の法則を使えば、金利が5%のときには、おおよそ8年で1.5倍になることが分かります。
40 ÷ 5 = 8年
まとめ
少々数学的でしたが、いかがでしたでしょうか。
72の法則自体、分かりやすく便利な部分もあるので、覚えておいてもいいと思います。
また、2倍では使いずらいという方は、上記の式のもと、自分だけの法則を考えてもいいかもしれません。