はじめに
ミクロ経済学・マクロ経済学など、経済学の様々な分野で、定常状態や均衡が安定的であるかどうかを知る必要があります。
仮に、定常状態や均衡があっても、変数がそこに向かわなければ、意味がないからです。
そのため、定常状態や均衡の安定性を知る必要があるわけですが、1変数の場合について、その方法を説明しています。
方法
$t$とともに変化する変数$x$を考えるものとします。
このとき、$dx / dt$がどのようになるかを考えます。
①定常状態を求める
まずは、$dx / dt$について、
$\dfrac{d x}{d t} = 0$
として、定常状態を求めます。
なお、定常状態として、
$x_1^* \, \cdots \, x_n^* \quad (x_1^* \leq \cdots \leq x_n)$
のような$n$個の解が得られたとします。
②区間ごとの$dx / dt$の符号を調べる
各定常状態(解)の間で、変数$x$がどのような動きをするか調べます。
具体的には、
$x < x_1^*$
$x_1^* < x < x_2^*$
$\vdots$
$x_{n-1}^* < x < x_n^*$
$x_n < x$
について、それぞれ$d x / d t$の正負の符号を調べます。
②安定性の判定
それぞれの区間で、正負の符号を調べると、
$\dfrac{d x}{d t} > 0$のとき、$x$は増加
$\dfrac{d x}{d t} < 0$のとき、$x$は減少
となるので、定常状態の安定性を判定します。
例
例として、次のような方程式で、定常状態の安定性を見てみましょう。
$\dfrac{d x}{d t} = x( x \; – \; 4) \quad \cdots \quad (1)$
①定常状態を求める
上記の方程式において、
$\dfrac{d x}{d t} = x( x \; – \; 4) = 0$
とすると、定常状態(解)は、
$x^* = 0 \, , \, 4$
の2つとなります。
②区間ごとの$dx / dt$の符号を調べる
($x < 0$のとき)
$(1)$式において、$x$は負、$(x \; – \; 4)$も負となるので、
$\dfrac{d x}{d t} > 0$
となります。
($0 < x < 4$のとき)
$(1)$式において、$x$は正、$(x \; - \; 4)$は負となるので、 $\dfrac{d x}{d t} < 0$となります。
($x > 4$のとき)
$(1)$式において、$x$は正、$(x \; – \; 4)$も正となるので、
$\dfrac{d x}{d t} > 0$
となります。
②安定性の判定
以上から、
$x < 0$のとき、$x$は増加($x$は$0$に向かう) $0 < x < 4$のとき、$x$は減少($x$は$0$に向かう) $x > 4$のとき、$x$は増加($x$は$\infty$に向かう)
となります。
このことから、それぞれの定常状態について
$x^* = 0$は、漸近安定
$x^* = 0$は、不安定
となります。
参考
大浦宏邦『社会科学者のための進化ゲーム理論』
西村和雄『経済数学早わかり』