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市場の流動性を測る「カイルのλ」について

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投稿金融論中級
金融市場の流動性を測る指標である「カイルのλ」について、説明しています。
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市場の流動性

 金融市場において、市場の流動性は重要な概念です。
 例えば、1つの取引で、価格が大きく変化するようでは、市場は乱高下を繰り返すことになるからです。

 乱高下が少なく、滑らかな価格形成が行われるような市場について、市場の流動性が高いと言われ、良い市場とされています。

 それでは、市場の流動性が高いかどうかを知る方法として、どのようなものがあるでしょうか。

 伝統的には、次のような指標で判断することになります。

  ・売買高
  ・売買回転率(売買高÷平均上場株式数)
  ・売買代金回転率(売買代金÷平均時価総額) など

 しかし、金融論やファイナンス論のマーケットマイクロストラクチャーにおける研究では、カイルのλ(カイルのラムダ)が用いられます。

カイルのλ

 カイルのラムダは、$t$期の価格を$P_t$、売買高を$Q_t$としたとき、次式を回帰し、求めることができます。

  $P_t = P_{t-1} + \lambda Q_t+ e_t$

 ここで、$e_t$は誤差項です。

 式から分かるように、推定された$\lambda$が小さいほど、価格は売買高の影響を受けず、流動性が高いと言えます。逆に、推定された$\lambda$が大きいほど、流動性は低く、乱高下をしやすい市場となります。

  $\lambda$が小さい ⇒ 市場の流動性が高い

  $\lambda$が大きい ⇒ 市場の流動性が低い

マーケットインパクト

 マーケットインパクトとは、投資家が自身の取引によって、どれだけ市場価格に変動を与えることができるかといったものです。

 これをカイルのλで考えると、$\lambda$が小さいときには、市場の流動性が高く、投資家自身の取引は、市場の価格にあまり影響を与えず、マーケットインパクトは小さいとされます。逆に、$\lambda$が大きいときには、市場の流動性が低く、投資家自身の取引が市場価格に大きな影響を与えるため、マーケットインパクトは大きいとされます。

  $\lambda$が小さい ⇒ マーケットインパクトは小さい

  $\lambda$が大きい ⇒ マーケットインパクトは大きい

 なお、大口の投資家にとっては、マーケットインパクトが大きい市場は望ましくないとされます。なぜなら、マーケットインパクトが大きい市場は流動性が低く、例えば、投資家が売り注文を出したとき、買い手がつかず、売却価格の低下を招く可能性があるからです(これを、マーケット・インパクト・コストと言います)。

 また、急激な価格変動を望まない投資家にとっても、 $\lambda$が小さく、マーケットインパクトは小さいほうが望ましいと言えます。

参考

  大村敬一『ファイナンス論

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