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中央銀行の独立性とはどういうものなのか?

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投稿金融論初級
金融論やマクロ経済学において、中央銀行の独立性とはどういうものなのか、その必要性も含めて、説明します。
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概要

 中央銀行(日本でいえば、日本銀行)は、金融政策を行っていますが、この金融政策を行うにあたり、政府とは独立して、自主的に行うべきという考えがあります。

 これが「中央銀行の独立性」という考えです。

 それでは、なぜ独立性が必要なのか、その独立性とはどんなものなのかについて、説明します。

独立性の必要性

基本的な考え方

 政府と中央銀行が独立していないと、どのようになるかを考えてみましょう。

 政府は、選挙により選ばれた政治家が運営するので、どうしても有権者に受け入れられやすい政策を志向します。

 具体的には、財政支出をどんどんやったり、減税したりすると、有権者は喜ぶでしょう。ただ財源には限りがあるので、その資金を用意しなければなりません。このとき、中央銀行が政府と独立しておらず、自由に中央銀行を操れるとしたら、その財源として、中央銀行に紙幣をどんどんと刷らせればいいことになります。そうすると、インフレなどが発生し、経済状況は悪化してしまいます。

 実際、戦前の日本においては、日本銀行は政府とは独立しておらず、日銀引き受けによりどんどんと紙幣を発行し、戦争に突入。最終的には、戦後のハイパーインフレにつながったとされます。

 このような状況を避けるため、中央銀行は政府とは独立・一定の距離を置き、金融政策を実施すべきという話になるわけです。

実証

 この話は、言い換えれば、中央銀行が独立していればインフレは起こらず、中央銀行が独立していなければインフレが起こりやすいという話にもなります。

 ここで、有名なのがアレシナとサマーズによる研究です。

 下のグラフは、中央銀行の独立性とインフレ率の関係性を示したグラフです。横軸は中央銀行の独立性を示す指標となっており、縦軸はインフレ率です。

 Alberto Alesina and Lawrence H. Summers (1993) “Central Bank Independence and Macroeconomic Performance: Some Comparative Evidence

 グラフを見ると、中央銀行の独立性が低いほど、インフレ率が高く、中央銀行の独立性が高いほど、インフレ率が低いような傾向があると思います。

 ただ、中央銀行の独立性を示す指標をどうするかで結果は変わってくる部分もあり、注意が必要です(1993年当時、日本経済が強い中、日本の構造改革を迫るため、このような研究が行われたという都市伝説もあります)。

独立性の定義

 次に、独立性とはどのようなことを示すのかを考えましょう。
 一般に、中央銀行の独立性については、「目標の独立性」「手段の独立性」という2つの独立性があるとされています。

目標の独立性

 目標の独立性とは、金融政策を実施にあたり、中央銀行が自主的に目標を定めるというものです。
 ただ、中央銀行が何でもかんでも、好きに目標を立てることはできません。

 例えば、日本銀行においては、日本銀行法で、「通貨及び金融の調節」(金融政策)や「物価の安定」などが規定されています。

「日本銀行は、我が国の中央銀行として、銀行券を発行するとともに、通貨及び金融の調節を行うことを目的とする」(日本銀行法第一条第一項)

「日本銀行は、通貨及び金融の調節を行うに当たっては、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資することをもって、その理念とする」(日本銀行法第二条)

 そうしたときに、目標の独立性とは、これらの目的のもと、具体的な目標値などを自主的に設定できるということとされています。
 例えば、日本銀行では、物価の安定は当然ながら、2013年にインフレ率2%という目標を掲げました。これはこの「目標の独立性」に基づいたものといえるでしょう。

手段の独立性

 一般的に、中央銀行の独立性といったとき指すのが、この「手段の独立性」とされています。
 ある目標に対して、それを実現するために、自主的に手段を選択できるというものです。

 日本銀行法においても、目標ではなく、「通貨及び金融の調節」(金融政策)についての自主性が謳われています。

「日本銀行の通貨及び金融の調節における自主性は、尊重されなければならない。」(日本銀行法第三条第一項)

留意点

 上記のように、中央銀行の独立性は重要とされますが、反面、その独立性を担保するため、中央銀行には説明責任が求められています。

「日本銀行は、通貨及び金融の調節に関する意思決定の内容及び過程を国民に明らかにするよう努めなければならない。」(日本銀行法第三条第二項)

 また、政府の過度な介入は避けるべきかもしれませんが、政府とは全く違う動きをしていては、経済政策はうまくいきません。このため、日本銀行法でも、政府との連携が求められています。

「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分な意思疎通を図らなければならない。」(日本銀行法第四条)

最後に

 一般的には、中央銀行の独立性は重要とされます。

 ただ、歴史的にはこのような考えで金融政策が行われてきた期間は短く、近年ではMMTのように政府=中央銀行という考えもあります。

 個人的にはたぶん、中央銀行の独立性が大事ではなく、経済を良くするにあたり、政府と中央銀行の関係がどのようであれば最適なのかという点のほうが、重要なのだと思います。

参考

  小林照義『金融政策

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