ウェーバー・フェヒナーの法則
「ウェーバー・フェヒナーの法則」とは、19世紀の心理学者グスタフ・フェヒナーが提唱したもので、
「人間の知覚の大きさは、その人が受けた刺激の強さの対数に比例する」
というものです。
式で表すと、知覚の大きさを$E$、刺激の強さを$R$とすると、
$E = a \ln R$
と表すことができます($a$は定数)。
知覚の大きさは、刺激の強さに対して対数で変換されるので、刺激の強さが小さいときには、その変化は大きく感じられるのに対して、刺激の強さが大きいときには、その変化はあまり感じなくなることを示しています。
双曲型割引の導出
ところで、双曲型割引とは、
「目先の時間変化は効用を大きく割引くのに対して、遠い先の時間変化はあまり気にしない」
というものです。
上記のウェーバー・フェヒナーの法則に類似していると感じられるでしょう。
実施に、このウェーバー・フェヒナーの法則を、時間について当てはめると、双曲型割引を導出することができます。
実際の物理的な時間を$t$、心理的に感じる時間を$T$として、ウェーバー・フェヒナーの法則に基づき、次のような式を仮定します。
$T = \ln (1 + t) \quad \cdots \quad (1)$
ここで、連続型の一般的な指数型割引は、割引率を$\rho$とすると、
$\exp (-\rho T)$
と表されるので、$(1)$式に代入すると、
$\exp \, [-\rho (\ln (1 + t))] = \exp \, (\ln (1 + t)^{-\rho}) = \dfrac{1}{(1 + t)^{-\rho}}$
を得ることができます。
そしてこの
$\dfrac{1}{(1 + t)^{-\rho}}$
は、双曲型割引の1つのモデルとなっているので、ウェーバー・フェヒナーの法則から、双曲型割引を導出することができます。
参考
依田高典『行動経済学』