コブ=ダグラス型生産関数とは
経済学において、生産関数として、コブ=ダグラス型生産関数がよく利用されます。
生産量を$Y$、技術力を$A$、労働力を$L$、資本を$L$としたとき、
$Y = A L^\alpha K^\beta \quad (\alpha > 0 \, , \, \beta > 0)$
というものが、コブ=ダグラス型生産関数です。
労働力と資本について、$\alpha \, , \, \beta$で累乗し、生産量が決まるという形になっています。
以下より、コブ=ダグラス型生産関数の特徴などを述べたいと思いますが、分かりやすく説明するため、技術力を考えずに、$\alpha + \beta =1$の場合を考えます。
$Y = L^\alpha K^{1 – \alpha} \quad (0 < \alpha < 1) \quad \cdots \quad (1)$ なお、導出方法などを知りたい方は、「[idlink id="835"]」を見てください。
コブ=ダグラス型生産関数がなぜ使われるのか
コブ=ダグラス型生産関数は、経済学ではよく使われるのですが、それにはいくつかの理由があります。
線形化が簡単
$(1)$式を対数化すると、
$\ln Y = \alpha \ln L + (1 \; – \; \alpha) \ln K$
という形で、簡単に足し算の線形の式になります。
計量経済学では、掛け算のような非線形の関数は推計がやりにくいのですが、このような線形の式ならば、簡単に推計が可能になります。
更に、この線形の式を時間微分すると、
$\dfrac{\dot{Y}}{Y} = \alpha \dfrac{\dot{L}}{L} + (1 \; – \; \alpha) \dfrac{\dot{K}}{K}$
となり、労働力や資本などの変化率についても、線形の式で表すことができ、便利です。
(時間微分については、「時間微分した変化率・成長率について」を参考にしてください)
1人当たりで表したら、もっと簡単になる
$(1)$式の両辺を$L$で割れば、
$\dfrac{Y}{L} = L^{\alpha – 1} K^{1 – \alpha}$
ですが、1人当たりの所得と資本を$y \, , \, k$とすると、$y = Y / L$、$k = K /L$であることから、
$y = k^{1 – \alpha}$
となり、1人当たりで考えると、コブ=ダグラス型生産関数はもっと簡単になります。
そして、この式も対数をとれば、
$\ln y = (1 – \alpha) \ln k$
であり、線形化も容易です。
コブ=ダグラス型生産関数の性質
生産関数を考えるとき、限界生産力がどうなのかなど、その性質が気になると思うので、それらをまとめておきたいと思います。
1次同次
$\alpha + \beta =1$であるので、このときには、コブ=ダグラス型生産関数は1次同次になります。
$\lambda Y = (\lambda L)^\alpha (\lambda K)^{1 – \alpha} = \lambda^{\alpha + 1 – \alpha} L^\alpha K^{1 – \alpha} = \lambda L^\alpha K^{1 – \alpha} = \lambda Y$
なお、1次同次でなく、$k$次同次の場合には、次のような式が成り立ちます。
$\alpha + \beta = k$
限界生産力
限界生産力は、生産関数を生産要素で微分したものなので、
$\dfrac{\partial Y}{\partial L} = \alpha L^{\alpha \; – \; 1} K^{1 – \alpha} = \alpha \left( \dfrac{K}{L} \right)^{1 – \alpha}$
$\dfrac{\partial Y}{\partial K} = (1 \; – \; \alpha) L^{\alpha} K^{ – \alpha} = \alpha \left( \dfrac{K}{L} \right)^{- \alpha}$
となります。
分配率
労働分配率と資本分配率は、それぞれの生産要素を生産量で割ったものなので、
$\dfrac{L}{Y} = \dfrac{L}{L^\alpha K^{1 – \alpha}} = \left( \dfrac{K}{L} \right)^{1 – \alpha}$
$\dfrac{K}{Y} = \dfrac{K}{L^\alpha K^{1 – \alpha}} = \left( \dfrac{K}{L} \right)^{- \alpha}$
となります。
限界生産力と比較すると、限界生産力からパラメーターがないものが、労働分配率・資本分配率となります。
代替の弾力性
代替の弾力性は、1次同次の場合には、生産関数を$f(L \, , \, K)$としたとき、代替の弾力性$\sigma$は、
$\sigma = \dfrac{f_L f_K}{Y f_{LK}}$
という式になり、この式を使って、コブ=ダグラス型生産関数の代替の弾力性を求めましょう。
$f_L$と$f_K$は、上記の限界生産力であり、
$f_{LK} = \alpha (1 – \alpha) L^{\alpha \; – \; 1} K^{- \alpha}$
であることから、代替の弾力性の式にそれぞれを代入すると、
$\sigma = \dfrac{\alpha L^{\alpha \; – \; 1} K^{1 – \alpha} \cdot (1 \; – \; \alpha) L^{\alpha} K^{ – \alpha}}{L^\alpha K^{1 – \alpha} \cdot \alpha (1 – \alpha) L^{\alpha \; – \; 1} K^{- \alpha}} = 1$
となり、1次同次のコブ=ダグラス型生産関数の代替の弾力性は1となります。
最後に
コブ=ダグラス型生産関数に関する問題・例題も別に書きましたので、見てください。