独占企業においては、生産量を調整して、価格にも影響を与えることができますが、需要の価格弾力性の大小により、価格への影響が異なってきます。
結論から言えば、
・需要の価格弾力性が大きい ⇒ より低い価格
・需要の価格弾力性が小さい ⇒ より高い価格
となります。
どうしてこのようになるのかを説明したいと思います。
独占企業の利益を$\pi$、産出量を$x$、価格を$p$、費用関数を$C(x)$とします。そして、独占企業は、生産量の大小で価格をコントールできるとし、$p = P(x)$とすると、独占企業は、次のような利潤関数を最大化することになります。
$\pi = P(x) \cdot x \; – \; C(x)$
そして、限界収入を$MR$、限界費用を$MC$とすると、独占企業の利潤最大化条件は、
$MR = MC$
となります(なぜそうなるか知りたい方は「独占市場の基本モデル(数式モデル)」あたりを見てください)。
ところで、$MR$について、改めて整理すると、
$MR = \dfrac{\partial(P(x) \cdot x)}{\partial x} = P(x) + x \cdot \dfrac{\partial P(x)}{\partial x} = P(x) \left( 1 + \dfrac{\partial P(x) / P(x)}{\partial x / x} \right)$
を得ることができます。
需要の価格弾力性$\epsilon$は、
$\epsilon = \dfrac{\partial x / x}{\partial P(x) / P(x)}$
であるので、
$MR = P(x) \left( 1 + \dfrac{1}{\epsilon} \right)$
となります。
そして、独占企業の利潤最大化条件$MR = MC$を使うと、
$P(x) = \dfrac{1}{1+ 1 / \epsilon} MC$
となります。ちなみに、$1 / \epsilon$はラーナーの独占度と言われるものです(ラーナーの独占度については「ラーナーの独占度について」)。
$\epsilon$がマイナスの値をとることに注意すると、
$\displaystyle \lim_{\epsilon \to – \infty} P(X) = MC$
$\displaystyle \lim_{\epsilon \to – 1} P(X) = \infty$
であることから、需要の価格弾力性が大きいほど、価格は低くなり、需要の価格弾力性が小さいほど、価格は高くなります。
特に、需要の価格弾力性が無限大に大きくなると、独占企業であっても、完全競争企業と同じく、限界費用と等しい価格となることが分かります。
参考
奥野正寛・鈴村興太郎『ミクロ経済学Ⅱ』
武隈愼一『ミクロ経済学』