モズラーの名刺
「モズラーの名刺」とは、MMT(現代貨幣理論)の提唱者の1人であるウォーレン・モズラー(Warren Mosler)による例え話です。
内容は次の通り。
ある日、モズラーは子供たちに掃除をさせるため、掃除の報酬として、名刺を渡すことにしました。
しかし、子供たちにとって、名刺は価値がないため、そのままでは掃除はしません。
そこで、モズラーは、「月に〇枚の名刺を自分に渡さなければ勘当する」と話をしました。
結果、子供たちは一生懸命、掃除をし、名刺を集めるようになった。
この話自体はたわいもないものですが、ここに「貨幣」の本質があるとモズラーは考えます。
モズラーや子供たちなどを、次のように置き換えてみましょう。
モズラー ⇒ 政府
子供たち ⇒ 国民
名刺 ⇒ 貨幣
掃除をさせ名刺を渡す ⇒ 政府支出
名刺をモズラーに渡す ⇒ 租税
この置き換えをベースに、上記の例え話を書き換えてみましょう。
政府は、政府支出を行うこととし、国民に仕事をさせ、その代わり貨幣を渡す。
国民は、貨幣を集め、税金を支払う
つまり、政府は政府支出を行うことで、貨幣を発行し、国民は税金を払うため、貨幣を求めるというものになっています。
これは、従来の経済学で想定しているような貨幣・政府支出・租税の考えとは大きく異なっています。従来の経済学では、租税を行い、それをもとに政府支出を行うとされています。また、従来の経済学では、貨幣は政府の信用度を表すなどとされますが、ここの話では、貨幣は何でもよく、信用度なども関係ありません。むしろ、租税という形で貨幣を回収する仕組みのほうが重要視されます。
そして、このようなMMTの基本的な考えを、例え話という形で表したのが「モズラーの名刺」となっています。
私見
MMTについて、賛否両論はありますが、この考えは非常に面白い考えだと思います。
(なお、「MMT(現代貨幣理論)を分かりやすく概観します」でMMTの全体像をまとめています)
日本において、江戸時代は年貢は米で納めることになっていましたが、大坂の堂島では世界で初と言われる先物まで行われるほど、米の流通市場は発達していました。
もし、米で年貢を納めるという「モズラーの名刺」のようなシステムがなければ、これほどの流通システムはできていなかったのではとさえ、思ってしまいます。
大坂の堂島の話自体は、歴史としては知っていましたが、この「モズラーの名刺」の話を知り、これまでとは違った見方が生まれ、非常に面白いと感じています。