はじめに
ミクロ経済学の企業行動においては、まずは完全競争やプライス・テイカーであることを前提としたモデルを学ぶことになります。
ただ現実の世界においては、すべてがそのような状態にあるわけではありません(むしろ少ない!)。
企業が一社しかおらず、その企業に市場が支配されているような独占状態にある場合もあります。
このときには、完全競争にあるような状態とは異なる形で、その独占企業は振舞うはずです。
これを分析するのが、独占市場における独占企業のモデルであり、このモデルについて、基礎的で教科書的なものを説明したいと思います。
独占企業のモデル
前提
独占企業の利益を$\pi$、産出量を$x$、価格を$p$、費用関数を$C(x)$とすると、独占企業は、次のような利潤関数に直面することになります。
$\pi = px \; – \; C(x) \cdots (1)$
これは完全競争における企業の利潤関数と同じですが、独占企業においては、独占状態にあるので、価格をコントロールできます。価格について、通常の需要関数は$x = D(p)$となりますが、独占にあるので、生産量から価格が決まるという、次のような逆需要関数$F(x)$
$p = F(x) \cdots (2)$
を定義します(なお、生産量が大きければ価格は下がるので、$F(X)<0$です)。
このとき、企業の収入$R$は、
$R = p x = F(x) x \cdots (3)$
となり、この式から、1単位生産量を増加させたときの収入の増分である「限界収入」を導出できます。
$\displaystyle \dfrac{d R}{d x} = F'(x) x + F(x) \cdots (4)$
利潤最大化
上記のような前提のもと、$(1)(3)$式から、独占企業は、次のような利潤関数に直面します。
$\pi = F(x) x \; – \; C(x)$
そして独占企業が利潤最大化行動をとるとして、この式について$x$で微分すると、
$\dfrac{d \pi}{d x} =F'(x) x + F(x) \; – \; C'(x) = 0$
であり、
$F'(x) x + F(x) = C'(x) \cdots (5)$
となります。
すなわち、$(4)$式に注意すると、独占企業における利潤最大化条件は、
限界収入 = 限界費用
となります。
価格
独占企業が利潤最大化を行った結果、この市場の財価格は$(2)(5)$式から、
$p = F(x) = C'(x) \; – \; F'(x) x$
となります。
完全競争では、企業は「限界費用=価格」($p = C'(x)$)となるように行動しますが、独占企業ではこのような価格となります。
そして、$F'(x)<0$であることに注意すると、独占市場においては、完全競争の場合に比べて、$-F'(x) x$だけ価格が高くなることが分かります。
なお、需要関数・逆需要関数いずれも、価格が高ければ需要量も減少するので、完全競争に比べて、独占市場では生産量も少なくなります。
参考
武隈愼一『ミクロ経済学』