はじめに
経済成長や成長理論において、最も基本的なものとして、ソロー・モデルがあると思います。
ソロー・モデルにおいては、経済がどんどんと大きくなり、ある水準に行くと経済は均衡に達するとされます。
詳しくは、
「ソロー・モデルの意味合いを、式計算なしで導出・説明します」
「ソロー・モデルを解説(数式あり)」
を見てほしいのですが、ここでは、重要なポイントについて説明します。
ソロー・モデルの結論
ソロー・モデルの結論は、
「1人当たりの資本がある均衡水準に向かって、経済が成長する」
というものです。そして、
「そのときの1人当たりの消費水準は最適になるかどうか」
がポイントとされます。
ところで、ここには暗黙的な考えがあります。
ポイント
ソロー・モデルにおいては、「貯蓄=投資」とされます。
家計が貯蓄したものは、すべて投資に回り、それが資本の蓄積につながるとされます。逆に言えば、資本の蓄積を行うには、投資=貯蓄が必要であるということです。
貯蓄があれば ⇒ 資本は増え、経済は成長する
貯蓄がなければ ⇒ 資本は増えず、経済は成長しない
他方、所得は消費か貯蓄に回るとされます。そうすると、消費を増やせば、貯蓄が減り、消費を減らせば、貯蓄は増えます。
そうすると、
消費が多い ⇒ 貯蓄が少なく、資本の増加は少なく、経済はあまり成長しない
消費が少ない ⇒ 貯蓄が多く、資本の増加は多く、経済は成長する
ということです。
すなわち、ソロー・モデルにおいては、
「消費を多くすれば、経済はあまり成長しない」
「消費を我慢すれば、経済は成長し、経済成長でより多く消費できる、」
ということを言っています。
歴史に詳しい方であれば、長岡藩士の小林虎三郎の言葉で
「米百俵の精神」
ということを聞いたことがある方も多いと思います。
「百俵の米も、食えばたちまちなくなるが、教育にあてれば明日の一万、百万俵となる」
というもので、まさしく「貯蓄=投資」のもと、消費を我慢し、貯蓄をすれば、将来的には大きな消費が得られるということを言っています。
また、マルクス経済学では、「原始蓄積」という言葉もありますが、類似点の多い考えであると言えるでしょう。
すなわちまとめると、ソロー・モデルでは、
「消費するか、我慢して貯蓄をして資本を増やし将来の消費を増やすか」
ということを考えているモデルと言えるでしょう。
なお、この考えは、ラムゼーモデル(最適成長モデル)でも、この考えがモデルの根本になっています。
ケインズモデルとの相違
上記のような考えをどう思うかは別として、上記のような考えがない場合を考えれば、分かりやすいかもしれません。
そしてこの分かりやすいモデルとして、ケインズモデルがあります。
ケインズモデル(ケインズ経済学)では、そもそも家計は出てきませんし、何よりも
「投資は利子率で決まる」
と考えます。
ケインズモデルは短期モデルだという考えはおいておいて、投資は貯蓄(消費の我慢)であるという考えとは、全く違うモデルであるといえるでしょう。
最後に
上記のように、ソロー・モデルにおいては、
「消費するか、そうではないか」
という点に焦点を当てています。
人間は、消費が多いほうがいいわけですが、そこに貯蓄というトレード・オフの要素を加えて、モデルを組んでいるという言い方もできるでしょう。
そして、この考えは、上でいったように、最適成長モデルでも登場しますし、RBC(リアルビジネスサイクル)などでも余暇というトレード・オフ的要素を加えて、モデルが構成されている点に注意をしましょう。