マクロ経済学の動学モデルにおいて、非ポンジー・ゲーム条件(No-Ponzi game condition)というものが設けられます。
$t$期における資産を$ a_t$とし、$ r$を割引率とすると、次のような形になります。
$\displaystyle \lim_{t \rightarrow \infty} \left( \dfrac{1}{1+r} \right)^t a_t \geq 0$
これは、現在価値で表した資産の最終価値がプラスであることを表しており、負債を残すことを禁止している条件になります。
直観的には分かりにくければ、次のように生涯予算制約式を考えましょう。
$\displaystyle a_0 + \sum^{\infty}_{t=0} \left( \dfrac{1}{1+r} \right)^t w_t = \sum^{\infty}_{t=0} \left( \dfrac{1}{1+r} \right)^t c_t + \lim_{t \rightarrow \infty} \left( \dfrac{1}{1+r} \right)^t a_t $
ここで、それぞれは、次を意味します。
$a_0$:$ 0$期の資産(資産の初期量)
$\displaystyle \sum^{\infty}_{t=0} \left( \dfrac{1}{1+r} \right)^t w_t$:生涯賃金
$\displaystyle \sum^{\infty}_{t=0} \left( \dfrac{1}{1+r} \right)^t c_t$:生涯消費量
日本語で表すと、
資産の初期量 + 生涯賃金 = 生涯消費量 + 余った資産
ということです。
ここで、この式を変形すると、
$\displaystyle a_0 + \sum^{\infty}_{t=0} \left( \dfrac{1}{1+r} \right)^t w_t – \sum^{\infty}_{t=0} \left( \dfrac{1}{1+r} \right)^t c_t = \lim_{t \rightarrow \infty} \left( \dfrac{1}{1+r} \right)^t a_t $
となりますが、余った資産$ \lim_{\{t \rightarrow \infty\} } ( 1/(1+r) )^t a_t$がマイナスのときは、
$\displaystyle a_0 + \sum^{\infty}_{t=0} \left( \dfrac{1}{1+r} \right)^t w_t – \sum^{\infty}_{t=0} \left( \dfrac{1}{1+r} \right)^t c_t = \lim_{t \rightarrow \infty} \left( \dfrac{1}{1+r} \right)^t a_t \lt 0 $
となります。
つまり、資産の初期量と収入である賃金以上に、消費することになってしまい、最終的には負債を残す形になるというわけです。
このようなことは、おかしな話なので、非ポンジー・ゲーム条件として、制約を課します。
【参考】
齊藤誠・岩本康志・太田聰一・柴田章久『マクロ経済学』
神谷傳造「動的計画における横断条件について」