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ソロー・モデルによる貧困の罠の説明

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投稿開発経済学初級
開発経済学において、貧困状態を抜け出せないという「貧困の罠」について、ソロー・モデルで説明します。
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貧困の罠

 「貧困の罠」とは、貧困状態にある途上国が経済発展できずに、貧困のままでその状態を抜け出せないことを言います。

 国によっては、戦争があったり、政治的な混乱のために、経済発展できない場合があるでしょう。

 また、技術力などがなく、付加価値の高い製品を提供できないといった理由もあるかもしれません。

 ただ、ここではそれらは別として、成長理論の1つであるソロー・モデルにより、なぜ「貧困の罠」が生じるのかを説明します。

ソロー・モデル

 ソロー・モデルとは、経済がどのように成長するのかを説明するマクロ経済学の理論モデルの1つです。

 ソロー・モデルでは、次のような図が描かれます。

 このとき、人口増加率と減耗率を足したものよりも、貯蓄率×1人当たり生産量が小さければ、経済は成長は落ち込み、逆に人口増加率と減耗率を足したものよりも、貯蓄率×1人当たり生産量が大きければ、経済は成長します。

  人口増加率 + 減耗率 > 貯蓄率×1人当たり生産量 ⇒ 経済減少

  人口増加率 + 減耗率 < 貯蓄率×1人当たり生産量 ⇒ 経済成長

 そして、経済は最終的に「定常状態」というところに落ち着くというものです。

   もっと知りたければ「ソロー・モデルの意味合いを、式計算なしで導出・説明します」を見てください

貧困の罠

 通常のソロー・モデルにおいては、上記のように、貯蓄率×1人当たり生産量(生産関数)は緩やかな曲線を描きます。

 しかし、この曲線が、次の図のようになっているとしましょう。
 当初はあまり増加率が高くなく、途中で増加率は高まり、その後、低くなるといった例です。

 そうすると、1人当たりの資本について、k0以上のときには、上記の通常のソロー・モデルと同じですが、k0以下の場合が問題になります。
 このとき、次のような状態が生じていることになります。

  人口増加率 + 減耗率 > 貯蓄率×1人当たり生産量 ⇒ 経済減少

 ここで、1人当たり生産量は途上国なので小さく、減耗率はどの国でも変わらないとしましょう。更に、通常、途上国では人口増加率が高いことが想定されます。

 そうすると、残された問題は「貯蓄率」になり、貯蓄率が低いと、経済成長するどころか、経済はどんどんと落ち込んでいくことになります。

 丁寧に説明すると、貯蓄率が低いと、貯蓄をもとにした投資が少なくなり、1人当たりの資本も小さくなります。他方、人口はどんどんと増加していくので、1人当たり資本は少なくなってしまいます。言い換えれば、人口が増えているにもかかわらず、それに追いつくだけの投資(貯蓄)が小さいため、1人当たりの資本は小さくなっていくということです。
 そして、1人当たり資本が少ないので、1人当たりの生産量も少なくなります。

 まとめると、このソロー・モデルでは、「貯蓄率の低さ」が貧困の罠を招いているとされます。

まとめ

 最初に述べたように、貧困の罠の原因が「貯蓄率の低さ」だけにあるのではないでしょう。

 しかし、経済成長するには、一定の資本や投資が必要であり、このソロー・モデルでは、これをきれいに説明しているといえるでしょう

 そして、このソロー・モデルでは、何らかの形で貯蓄率を高めることで、1人当たり資本を、k0とk*の間に持ってこれれば、経済は成長軌道にのるというインプリケーションがあることにもなります。

参考

  戸堂康之『開発経済学入門

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