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絶対的リスク回避度と相対的リスク回避度の性質

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投稿ミクロ経済学中級
期待効用理論における絶対的リスク回避度と相対的リスク回避度の性質について、説明しています。
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絶対的リスク回避度と相対的リスク回避度

 期待効用理論において、ある人の選好がリスクに対してどのぐらい回避的なのかを測る指標として、絶対的リスク回避度と相対的リスク回避度の2つがあります。

 そしてそれぞれは、利益を$x$、効用関数を$u(x)$としたとき、次のように定義されます。

  絶対的リスク回避度:$\displaystyle A(x) = – \dfrac{u^{”}(x)}{u'(x)}$

  相対的リスク回避度:$\displaystyle R(x) = – x \cdot \dfrac{u^{”}(x)}{u'(x)}$

 この2つの違いは、

  $R(x) = x \cdot A(x)$

であり、絶対的リスク回避度に利得$x$を掛けて、ウエイト付けしたものが、相対的リスク回避度になります。

   絶対的リスク回避度と相対的リスク回避度(数式)

 そしてこれらのリスク回避度には、次のような性質があります。

絶対的リスク回避度と相対的リスク回避度の性質

性質1:リスクへの態度

 リスク回避度を計算すると、その人がリスクに対して、どのような態度なのかが分かります。

  $A(x)>0 \, , \, R(x)>0$のとき、リスク回避的

  $A(x)=0 \, , \, R(x)=0$のとき、リスク中立的

  $A(x)<0 \, , \, R(x)<0$のとき、リスク愛好的

 理由としては、$u'(x)>0$なので、

  $A(x)>0 \, , \, R(x)>0$のとき、$u^”<0$なので、効用関数は逓減

  $A(x)=0 \, , \, R(x)=0$のとき、$u^”=0$なので、効用関数は一定(線形)

  $A(x)<0 \, , \, R(x)<0$のとき、$u^">0$なので、効用関数は逓増

となるからです。

性質2:リスク回避度の大小

 2つの効用関数$u(x)$と$v(x)$があり、$u(x)=v(x)$のとき

  $-u(x) > -v(x)$ならば、$u(x)$のほうがリスク回避度は大きい

  $-u(x) = -v(x)$ならば、$u(x)$と$v(x)$のリスク回避度は等しい

  $-u(x) < -v(x)$ならば、$v(x)$のほうがリスク回避度は大きい

となります。

 違う言い方をすれば、リスク回避度の値が大きいほど、リスク回避的であり、リスク回避度の値が小さいほど、リスク回避的ではなくなるということです。

性質3:線形変換

 $v(x)$が$u(x)$の線形変換ならば、リスク回避度は同じになります。

 次のような線形変換を考えるとします。

  $v(x) = \alpha u(x) +\beta$

 ここで、$v(x)$の絶対的リスク回避度と相対的リスク回避度を$A*(x) \, , \, R^*(x)$とすると、

  $A^*(x) = – \dfrac{v^”(x)}{v'(x)} = – \dfrac{\alpha u^”(x)}{\alpha u'(x)} = – \dfrac{u^{”}(x)}{u'(x)} = A(x)$

  $R^*(x) = – x \cdot \dfrac{v^”(x)}{v'(x)} = – x \cdot \dfrac{\alpha u^”(x)}{\alpha u'(x)} = – x \cdot \dfrac{u^{”}(x)}{u'(x)} = R(x)$

となるからです。

参考

  大垣昌夫・田中沙織『行動経済学

  奥野正寛(編著)『ミクロ経済学

  川越敏司『「意思決定」の科学

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