はじめに
経済学において、中級以上の理論などを学ぶときに出てくるのが、固有値です。
そして、固有値に関連する数学として、対角行列を用いた行列の対角化があります。
経済学では、あまり表立って、対角行列の話が出てくることは少ないような気もしますが、実は重要な行列ですので、その性質をまとめてみました。
対角行列
次のように、対角成分以外の成分が0であるような正方行列を、「対角行列」と言います。
$\mathbf{A} = \begin{bmatrix}
a_{1} & 0 & \cdots & 0\\
0 & a_{2} & \cdots & 0\\
0 & 0 & \ddots & 0\\
0 & 0 & \cdots & a_{n}\\
\end{bmatrix}$
いわゆる、「ゼロ行列」や「単位行列」も対角行列の一種です。
対角行列の性質
対角行列の積
対角行列の積は、対角成分を累乗したものとなります。
$\mathbf{A}^k = \begin{bmatrix}
a_{1}^k & 0 & \cdots & 0\\
0 & a_{2}^k & \cdots & 0\\
0 & 0 & \ddots & 0\\
0 & 0 & \cdots & a_{n}^k\\
\end{bmatrix}$
対角行列の行列式
対角行列の行列式は、対角成分を掛け合わせたものになります。
$|\mathbf{A}| = \begin{vmatrix}
a_{1} & 0 & \cdots & 0\\
0 & a_{2} & \cdots & 0\\
0 & 0 & \ddots & 0\\
0 & 0 & \cdots & a_{n}\\
\end{vmatrix} = a_1 \cdot a_2 \cdot \; \cdots \; \cdot a_n$
なお、すべての$a_i \neq 0 (i=1 \, , \, 2 \, , \, \cdots \, , \, n)$であるとき、対角行列は正則行列となります。
対角行列の逆行列
対角行列が正則行列であるとして、その対角行列の行列式は、対角成分を逆数にしたものになります。
$\mathbf{A}^{-1} = \begin{bmatrix}
1/ a_{1} & 0 & \cdots & 0\\
0 & 1 / a_{2} & \cdots & 0\\
0 & 0 & \ddots & 0\\
0 & 0 & \cdots & 1 / a_{n}\\
\end{bmatrix}$
対角行列の固有値
対角行列の固有値は、対角成分そのものとなります。
すなわち、次が固有値となります。
$a_1 \, , \, a_2 \, , \, \cdots \, , \, a_n$