はじめに
ミクロ経済学を学ぶと、パレート最適という概念が出てきます。他方、ゲーム理論を学ぶと、ナッシュ均衡という概念が出てきて、何となく、パレート最適と似ている感じだが、何となく違うと印象を受けたりします。
特に、ゲーム理論では、パレート最適だが、ナッシュ均衡ではない場合があったりして、よく分からなくなってしまうことがあるように思います。
しかし、その違いについて、ポイントはたった1つ。それを説明します。
パレート最適とナッシュ均衡の違い
まずは、それぞれの概念を説明すると、ざっくり言えば、次の通り。
(パレート最適)
すべての消費者が、他の消費者の効用を引き下げることなく、自己の効用を最大化したときに得られる均衡
(ナッシュ均衡)
すべてのプレイヤーが、他のプレイヤーの行動を所与として、自己の利得を最大化したときに得られる均衡
消費者とプレイヤー、効用と利得などという表現の違いがあり、ややこしい部分がありますが、表現をプレイヤー・行動で、統一すると、
(パレート最適)
すべてのプレイヤーが、他のプレイヤーの効用を引き下げることなく、自己の効用を最大化したときに得られる均衡
(ナッシュ均衡)
すべてのプレイヤーが、他のプレイヤーの行動を所与として、自己の効用を最大化したときに得られる均衡
となります。
この2つを比較すると、違いは次の部分です。
パレート最適:他のプレイヤーの効用を引き下げることなく
ナッシュ均衡:他のプレイヤーの行動を所与として
すなわち、パレート最適では他のプレイヤーの効用(利得)を引き下げないという制約のもと、均衡が達成されるのに対して、ナッシュ均衡では、そのようなことはお構いなしに、自己の効用(利得)の最大化だけを追求しています。
なので、もっと砕いた言い方をすれば、
パレート最適:他者への思いやり
ナッシュ均衡:自己中心的
のもと、実現される均衡と言えるでしょう。
なので、ゲーム理論においては、ナッシュ均衡だが、パレート最適ではないということが、よくあります。
砕いた言い方では、
自己中心的(ナッシュ均衡)に行動した結果が、必ずしも、他者への思いやり(パレート最適)があるような行動にならない
ということです。
一言でいえば
以上から、パレート最適とナッシュ均衡のポイントは1つで、
他者の効用や利得を踏まえて、行動しているかどうか
で、概念が異なっていることになります。