はじめに
ミクロ経済学の企業行動において、費用関数の分析にあたり、
「限界費用曲線(MC曲線)は、平均費用曲線(AC曲線)と平均可変費用曲線(AVC曲線)の最低点を通過する」
というものがあります。
なぜ、そうなるのか、数式で説明したいと思います。
限界費用
ある企業が財$x$を生産するものとし、その費用関数を$C(x)$とします。このとき、総費用$c$は、次のようになります。
$c = C(x)$
そして、限界費用$MC$は、これを微分したものなので、
$MC = \dfrac{d c}{d x} = C'(x)$
となります。
限界費用と平均費用との関係
上記の費用関数において、平均費用$AC$は、次のような式になります。
$AC = \dfrac{C(x)}{x}$
これを$x$で微分し、$x$に対する平均費用の変化を見ています。
$\dfrac{d AC}{d x} = \dfrac{C'(x)}{x} \; – \; \dfrac{C(x)}{x^2} = \dfrac{C'(x) \; – \; C(x)/x}{x} = \dfrac{MC \; – \; AC}{x}$
この式から、$x$の増加に対して
$MC > AC$のとき、$AC$は増加する
$MC = AC$のとき、$AC$は変化しない($AC$は最小となる)
$MC < AC$のとき、$AC$は減少する
ということが分かります。
ゆえに、限界費用曲線は平均費用曲線の最低点を通過するということになります。
限界費用と平均可変費用との関係
論理としては平均費用の場合と同じなのですが、念のため、見てみましょう。
上記の費用関数において、平均可変費用$AVC$は、次のような式になります。
$AVC = \dfrac{C(x) \; – \; C(0)}{x}$
なお、$C(0)$は生産が$0$の場合の費用関数で、固定費用を表しています。
これを$x$で微分し、$x$に対する平均可変費用の変化を見ています。
$\dfrac{d AVC}{d x} = \dfrac{C'(x)}{x} \; – \; \dfrac{C(x)}{x^2} \; – \; \dfrac{C(0)}{x^2} = \dfrac{C'(x) \; – \; C(x)/x – \; C(0)/x}{x} = \dfrac{MC \; – \; AVC}{x}$
この式から、$x$の増加に対して
$MC > AVC$のとき、$AVC$は増加する
$MC = AVC$のとき、$AVC$は変化しない($AVC$は最小となる)
$MC < AVC$のとき、$AVC$は減少する
ということが分かります。
ゆえに、平均費用の場合と同様に、平均可変費用においても、限界費用曲線が平均可変費用曲線の最低点を通過するということになります。
参考
武隈愼一『ミクロ経済学』
奥野正寛(編著)『ミクロ経済学』