価格弾力性の定義
経済学において、価格弾力性という概念は、非常に重要です。
価格が変化したとき、需要や供給がどの程度変化するかというものです。
需要の価格弾力性についていえば、価格が1%変化したとき、需要が何%変化するかといったものです。
需要の価格弾力性 = 需要の変化率 ÷ 価格の変化率
価格が変化したとき、財・サービスへの需要も当然ながら変化するでしょう。財・サービスの価格が高騰すれば、需要は大きく減少し、財・サービスの価格が下落すれば、需要は増加すると考えられます。
価格弾力性の重要性
ただし、財・サービスによって、価格と需要の関係は相違します。価格が変わっても需要はあまり変わらないものもあれば、価格が変わると需要がすぐに大きく変わるものもあります。
需要の価格弾力性という概念を使えば、
需要の価格弾力性が大きい → 価格変化に対して、大きく需要が変化する
需要の価格弾力性が小さい → 価格変化があっても、あまり需要は変わらない
ということが分かることになります。
この点で、価格弾力性という概念を使うと、財・サービスの需要への価格の影響がすぐに分かることになり、経済学では重要な概念となってます。
なぜ変化率なのか
価格の需要への影響を見たければ、変化率ではなく、変化額で見たらいいのではと思うかもしれません。式でいえば、
需要の変化額 ÷ 価格の変化額
というものです。これでも、価格の変化に対して、需要への影響を見ることができます。しかし、色々な財・サービスがある中で、基準となる需要や価格は、財・サービスで大きく異なります。
例えば、2つの財があり、いずれも10円から20円に価格が上昇したとしましょう。このとき需要については、Aという財は10000個から9900個に需要が減り、Bという財は200個から100個に需要が減ったとします。
額で考えたときの上記の式で計算すれば、次のようにいずれも同じ値になります。
A:(9900個 – 10000個)÷ (20円 – 10円) = -10
B:(100個 – 200個)÷ (20円 – 10円) = -10
AとBではそもそもの需要量が違うので、同じに考えるのは変でしょう。Bのほうが明らかに、価格上昇による影響を受けていると思われます。
しかし、変化率でみれば、このような問題を避けることができることになります。
最後に
実は、価格弾力性が重宝されるのは、理論モデルで考えたとき、価格弾力性というものを定義すれば、式がすっきりする、分かりやすくなるという面もあるように思います。
例えば、ラーナーの独占度というものがあります(詳しく知りたい方は、「ラーナーの独占度について」)。
ラーナーの独占度の式は、次のようなもので、価格弾力性という概念がなければ、式はすっきりせず、直観的に理解しにくいものとなります。
ラーナーの独占度 = 1 ÷ 需要の価格弾力性
このように、経済学においては、価格弾力性というものがあると、数学的にも便利だという面もあるように思います。
なお、需要だけではなく、他にも価格弾力性の概念はあります。
例えば、供給などでも価格弾力性の概念はあり、供給の価格弾力性は、次のようになります。
供給の価格弾力性 = 供給の変化率 ÷ 価格の変化率