代替の弾力性
ある企業が、2つの生産要素$x_1 , X_2$を生産要素価格$w_1 , w_2$のもとで、生産を行っているものとします。
このとき、生産要素価格の比$w_1 / w_2$が変化したとき、一定の生産量を実現するため、生産要素の比$x_1 / x_2$も変化することになります。
この変化率の比は、「代替の弾力性」$\sigma$と呼ばれ、次のように定義されます。
$\displaystyle \sigma = \; – \dfrac{d(x_1 / x_2) / (x_1 / x_2)}{d(w_1 / w_2) / (w_1 / w_2} = \; – \dfrac{w_1 / w_2}{x_1 / x_2} \cdot \dfrac{d(x_1 / x_2)}{d(w_1 / w_2)}\cdots (1)$
この代替の弾力性の式について、他にもいくつかの表現があるので、まとめています。
代替の弾力性の別表現
生産関数を用いた表現
この企業が生産するにあたっての生産関数を$f(x_1 , x_2)$とすると、費用最小化条件から
$\displaystyle \dfrac{f_1}{f_2} = \dfrac{w_1}{w_2}$
が成り立ちます(なお、$f_1 , f_2$は生産関数$f$に対する$x_1 , X_2$の偏微分)。
この式を$(1)$式に代入すると、代替の弾力性は、次のように表現されます。
$\displaystyle \sigma = \; – \dfrac{f_1 / f_2}{x_1 / x_2} \cdot \dfrac{d(x_1 / x_2)}{d(f_1 / f_2)} \cdots (2)$
対数を用いた表現
対数に関して$d ln y = (1/y) dy$という公式があるので、これを$(2)$式に使うと、
$\displaystyle \sigma = \; – \dfrac{d ln (x_1 / x_2)}{d ln (f_1 / f_2)}$
という表現にすることもできます。
偏微分を使った表現
$(2)$式において、$d(x_1 / x_2)$と$d(f_1 / f_2)$というものが出てきます。これを更に計算することが可能です。
まずは、$d(x_1 / x_2)$について考え、全微分すると、
$\displaystyle d \left( \frac{x_1}{x_2} \right) = \dfrac{1}{x_2} dx_1 \; – \; \frac{x_1}{x_2} d x_2$
となります。費用最小化条件においては、$d x_2 / d x_1 = \; – f_1 / f_2$が成り立つので、この式から$d x_2$を消去すると、次を得ることができます。
$\displaystyle d \left( \frac{x_1}{x_2} \right) = \dfrac{x_1 f_1 + x_2 f_2}{x_2^2 f_2} d x_1 \cdots (3)$
次に、$d(f_1 / f_2)$について考え、全微分すると、
$\displaystyle d \left( \frac{f_1}{f_2} \right) = \frac{f_2 d f_1 \; – \; f_1 d_f2}{f_2^2}$
となります。ここで、$d f_1$と$d f_2$については、
$d f_1 = f_{11} d x_1 + f_1 f_2 d x_2$
$d f_2 = f_{12} f_2 d x_1 + f_{22} d x_2$
ですので、$d x_2 / d x_1 = \; – f_1 / f_2$という式に注意すると、
$\displaystyle d \left( \frac{f_1}{f_2} \right) = \frac{f_{11} f_2^2 \; – \; 2f_{12} f_1 f_2 + f_{22}f_1^2}{f_2^3} d x_1 \cdots (4)$
を得ることができます。
そして最後に、$(3)(4)$式を$(2)$式に代入すると、
$\displaystyle \sigma = \dfrac{f_1 f_2 (f_1 x_1 + f_2 x_2)}{x_1 x_2 (2 f_{12} f_1 f_2 \; – \; f_{11} f_2^2 \; – \; f_{22} f_1^2 )} \cdots (5)$
という式が得られます。
1次同次の場合
生産関数$f$が1次同次の場合、$f_1$と$f_2$は0次同次になり、オイラーの定理から、
(オイラーの定理については「オイラーの定理について説明」を参考にしてください)
$f_1 x_1 + f_2 x_2 = f$
$f_{11} x_1 + f_{12} x_2 = 0$
$f_{21} x_1 + f_{22} x_2 = 0$
という式が成立するので、$(5)$式の分母部分について、
$\displaystyle 2 f_{12} f_1 f_2 \; – \; f_{11} f_2^2 \; – \; f_{22} f_1^2 = \dfrac{f_{12}}{x_1 x_2} f^2$
となるので、$(5)$式は、次のようになります。
$\displaystyle \sigma = \dfrac{f_1 f_2}{f \cdot f_{12}}$
参考
西村和雄『ミクロ経済学』
ピーター・バーク、クヌート・シュドセーテル『エコノミスト数学マニュアル』