消費者余剰
消費者余剰といった場合、
「消費者がある財を需要するに際して、最大限支払ってよい額から実際に支払う額との差額」
と言われたりします。
これでは分からず、下図のような需要曲線があったとき、ある需要量と価格について、上側の灰色部分を消費者余剰と覚えていることが多いでしょう。
ただこれでは、消費者余剰の意味合いの本質を理解できていないのではないかと思います。
そこで、消費者余剰の意味合いについて、説明したいと思います。
ポイント
消費者余剰を理解するにあたって、2つのポイントがあると思っています。
1つは、需要曲線の意味を捉えなおしているという点です。
需要曲線と言えば、通常、
「消費者がある価格のとき、需要する量を表す曲線である」
という説明になるでしょう。
しかし、消費者余剰を理解するにあたっては、需要曲線とは、
「ある需要量に対して、そこから得られる効用を貨幣で表した曲線である」
となります。
すなわち、需要曲線とは、その消費者の効用を表したものということです(厳密には限界効用)。
2つは、これらの効用を足し合わせたものを考えているという点です。
需要量Aに対し効用aが得られたり、需要量Bに対し効用bが得られたり、その需要量に応じて、効用は変わるわけですが、それらをすべて足したものを想定しています。
数値例
ポイントを理解しやすくするため、数値例を示したいと思います。
ある消費者が映画を見に行く回数と料金について、下図のようになっているとしましょう。
通常の解釈では、次のようになります。
価格が8000円のとき … 1回映画を見に行く
価格が6000円のとき … 2回映画を見に行く
価格が4000円のとき … 3回映画を見に行く
価格が2000円のとき … 4回映画を見に行く
ただ、消費者余剰の理解にあたっては、次のように考えます(次のように読み替えることができます)。
1回映画を見に行く … 8000円分の効用が得られる
2回映画を見に行く … 6000円分の効用が得られる
3回映画を見に行く … 4000円分の効用が得られる
4回映画を見に行く … 2000円分の効用が得られる
そして、これらの効用をすべて足し合わせると、総効用を得ることができます。
8000円 + 6000円 + 4000円 + 2000円 = 20000円
これは、価格が0円であるときの消費者余剰を表しているといえます。
ただ実際は、タダということはないので、料金が4000円だったとしましょう。
このときには、下図の灰色部分が消費者余剰になります。
価格が4000円なので、4回映画を見に行ったときの効用2000円を下回るので、この消費者は3回までしか映画に行くことはしません。
ですので、この消費者は、1回・2回・3回の3つのパターンで効用を得ることができます。
1回映画を見に行く … 8000円分の効用
2回映画を見に行く … 6000円分の効用
3回映画を見に行く … 4000円分の効用
そして、総効用は、18000円になります。
8000円 + 6000円 + 4000円 = 18000円
他方、料金が4000円が発生するので、
1回映画を見に行く … 4000円の料金
2回映画を見に行く … 4000円の料金
3回映画を見に行く … 4000円の料金
となり、総費用は、12000円かかることになります。
以上から、
総効用18000円 – 総費用12000円 = 6000円
がこの消費者が得る便益であり、消費者余剰と呼ばれるものになります。