はじめに
経済において、外部不経済(負の外部性)があるときには、市場メカニズムが機能せず、市場の失敗が生じるとされます。
例えば、企業が公害を発生させていたとき、その企業にとっては、公害による他の経済主体への負の影響を考えずに、生産することが合理的です。しかし、他の経済主体にとっては、迷惑極まることで、社会的には望ましい状態とは言えません。
そこで、政府により、このような外部不経済を抑制する仕組みが必要なのですが、その代表的なものとして、ピグー税があります。
ピグー税
前提
ある2つの企業があるとして、企業1は価格$p$のもと、$x$を生産しているものとします。
企業1の利潤を$\pi_1$とし、費用関数を$c(x)$とすると、企業1は次のような利潤関数を最大化することになります。
$\pi_1 = px \; – \; c(x)$
そして、企業1は、次のような利潤最大化条件のもと、生産水準を決定すればよいことになります。
$p = c'(x) \quad \cdots \quad (1)$
他方、企業2は、次のような利潤関数に直面しているとしましょう(簡略化のため、生産等は省略)。
$\pi_2 = -e(x)$
企業1の生産に対して、一方的に負の外部性の影響を受けています。企業2は企業1の生産量を調整することもできず、企業1が生産量を増やすほど、企業2はマイナスが大きくなります。
社会的な最適水準
このような外部不経済は、企業1は企業2のことを考えずに、企業2は一方的にマイナスの影響を受けているため、生じる現象です。
そこで、社会的に望ましい生産量を考えるため、企業1と企業2を統合した場合の利潤の最大化を考えます。
すなわち、
$\pi_1 + \pi_2 = px \; – \; c(x)\; – \; e(x)$
という式を最大化すると、次のような利潤最大化条件を得ることができます。
$p = c'(x) + e'(x) \quad \cdots \quad (2)$
この式のもと、生産量を決めるのが、社会的に望ましい生産水準となります。
$(1)(2)$式を比較すると、企業1と企業2が別々に行動したときよりも、企業1の生産量は少なくなることが分かります。
ピグー税
このような社会的に望ましい企業1の生産水準を実現するため、企業1に単位当たり$t$だけ課税するものとします。
このときに、企業1の利潤関数は、次のようになります。
$\pi_1 = px \; – \; c(x) \; – \; t x$
そして、利潤最大化条件は、
$p = c'(x) + t \quad \cdots \quad (3)$
となります。
このとき、社会的に望ましいとき利潤最大化条件の式$(2)$と比べると、政府は
$t =e'(x)$
が成立するように、$t$を決定すればいいことになります。
このように、負の外部性を発生させている経済主体に対して、税金を課すことで、社会的に望ましい生産水準を実現しようとするのが、ピグー税になります。
最後に
ピグー税は、税という形で、会的に望ましい生産水準を実現するというものですが、補助金によっても、同様の効果を与えることができます。そして、これを「ピグー補助金」と言います。
参考
井堀利宏『公共経済の理論』