ロイの恒等式
ロイの恒等式とは、2財について、価格を
とし、所得を
、間接効用関数を
、需要関数を
とすると、
というものです。
すなわち、間接効用関数から需要関数を導けるというのが「ロイの恒等式」です(なお、ロワの恒等式と言われたりすることあります)。
導出方法
導出にあたり、改めて費用最小化問題を考えます。ここでは効用関数です。
これをラグランジュ乗数を使って、1階の条件を求めると、
が得られ、補償需要関数、補償所得関数
が得られます。
このとき、間接効用関数については、
が成り立つので、に注意し、
で微分すると、
となります。
ここで、マッケンジーの補題を使うと、
となります。
更に、、
であることから、上記の式は、
となり、式変形すると、
というロイの恒等式を得ることができます。
(なお、で考えましたが、当然ながら、
でも同じになります)
例
効用関数を特定化した場合に、ロイの恒等式が成立していることを見てみましょう。
効用関数をとしたとき、効用最大化問題は、次のようになります。
これを解くと、需要関数は、それぞれ次のようになります(解き方は、省略します)。
そして、これらを効用関数に代入すると、間接効用関数は、次のようになります。
ここで、間接効用関数について、財の価格
と所得
で偏微分すると、
が得られます。
そこで、ロイの恒等式を想定し、計算すると、
となり、右辺は正しく財の需要関数となっていることが分かります。
(同様に、財でも成立します)
すなわち、式のロイの恒等式が成立していることが分かります。
参考
武隈愼一『ミクロ経済学』
西村和雄『ミクロ経済学』