需要の支出弾力性
ミクロ経済学において、「弾力性」という言葉がよく出てきますが、その1つとして、支出弾力性があります。
需要の支出弾力性とは、
「所得が1%増加したとき、需要は何%変化するのか」
というものです。
数式で表すと、ある財の需要を$d_i$、所得を$m$とすれば、需要の支出弾力性$\eta$は、
$\eta = \dfrac{\partial d_i / d_i}{\partial m / m}$
と表されます。
通常は上級財と考えられるので、所得が増加すれば需要も増加すると考えられます。ただ、時折、所得が増加すると、需要が減少する下級財もあります。
また、需要の支出弾力性が1よりも小さいときは、所得が1%増加しても、1%未満しか需要は増えないので、必需財と考えられます。言い換えれば、所得が変化してもあまり需要が変化しない財なので、所得に関係なく、必要とされる財と考えられます。
逆に、需要の支出弾力性が1よりも大きいときは、所得が1%増加したとき、1%以上も需要を増加させるので、奢侈財と考えられます。
以上をまとめると、次のような表になります。
支出弾力性 | 財の区分 | |
---|---|---|
$\eta \geq 1$ | 上級財 | 奢侈財 |
$0 \leq \eta < 1$ | 必需財 | |
$\eta < 0$ | 下級財 |
支出弾力性の統計
この支出弾力性ですが、総務省統計局の「家計調査」で公表されています。
総務省統計局「家計調査」
推計された支出弾力性について、エクセルファイルが提供されており、次のような感じになっています。
例えば、二人以上の世帯の穀類の支出弾力性は、0.27909であり、支出を1%増やしても、0.28%しか、需要が増えないことが分かります。上記の財の区分でいえば、穀類は上級財・必需財といえそうです。
推計方法としては、統計局では、次のような式を推計しています。
$\ln C_{ij} = const_i + \eta_i \ln Y_j$
ここで、
$C_{ij}$:第$i$支出項目、第$j$年間収入階級の支出項目金額
$const_i$:定数項
$\eta_i$:第$i$支出項目の支出弾力性
$Y_j$:第$j$年間収入階級の消費支出金額
となっています。
なお、対数を用いているかについては、「弾力性を推計したいときは、対数線形モデルを使う」あたりを参考にしてください。