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従量税は誰が負担するのか?

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投稿公共経済学中級
経済学において、従量税は企業と消費者のどちらがが負担するのかといった問題について、理論的な数式で説明したいと思います。
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はじめに

 従量税とは、財・サービスの1単位当たりごとに課せられる税金です。例えば、財・サービス1個当たりに○○円の税金がかかるといったような場合です。
 現実の世界でいえば、たばこ税は、たばこ1本あたり15.244円の税金が課せられているので、従量税にあたります。
 (従量税については、「財・サービスへの2つの課税 従価税と従量税について」でも書いています)



 ところで、このような従量税が課せられたとき、誰がその税金を負担するのでしょうか。

 通常でしたら、企業は価格に税金を上乗せするだけなので、消費者がその従量税を負担すると考えられます。しかし、企業が客離れを恐れ、税金分の値上げを避けたときには、その従量税は企業が負担をすることになります。

 このように、消費者と企業いずれが従量税を負担するのかが気になるところです。これを数式で説明したいと思います。

従量税の負担

 まずは、従量税を$T$、課税前の価格を$p$としたとき、企業の供給価格$p_s$、消費者の需要価格$p_d$が、次のような従量税を考えます。

  $p_s = P + T$

  $p_d = P$

企業・消費者への影響

 課税後の価格を$p*$とすると、供給価格から課税後価格を引いた額が、企業の課税による負の影響となり、課税による企業負担を$B_f$とすると、

  $B_f = p_s \; – \; p^* = P + T \; – \; p^*$

となります。

 他方、消費者において、その需要価格を$p_d$とすると、課税後価格から需要価格を引いた額が、消費者への影響であり、課税による消費者負担を$B_c$とすると、

  $B_c = p^* \; – \; p_d = p^* \; – \; P$

 ところで、税金$T$について、式変形すると

  $T = (p^* \; – \; p) + (T + p \; – \; p^*)$

とすることができます。この式の右辺第1項はまさしく消費者負担$B_c$、右辺第2項は企業負担$B_f$なので、

  $T = B_c + B_f \quad \cdots \quad (1)$

と表すことができます。

供給量・需要量への影響

 課税前の供給量を$s$、課税後の供給量を$s*$としたとき、課税による供給の減少率は、

  $\dfrac{s^* \; – \; s}{s}$

と定義できます。

 ここで、供給の価格弾力性$\varepsilon_s$は、

  $\varepsilon_s = \dfrac{(s^* \; – \; s) / s}{(p_s \; – \; p^*) / p}$

であることに注意すると、供給の減少率は、次のようになります。

  $\dfrac{s^* \; – \; s}{s} = \varepsilon_s \dfrac{B_f}{p}$

 同様に、消費者の需要の減少率を考えると、 課税前の需要量を$d$、課税後の需要量を$d*$とし、需要の価格弾力性$\varepsilon_d$を考えると、

  $\dfrac{d^* \; – \; d}{d} = \varepsilon_d \dfrac{B_c}{p}$

となります。

減少率の均衡

 課税により供給量と需要量は減少しますが、それぞれの減少率は一致するので、

  $\varepsilon_s \dfrac{B_f}{p} = \varepsilon_d \dfrac{B_c}{p}$

であり、整理すると、

  $\varepsilon_s \cdot B_f = \varepsilon_d \cdot B_c \quad \cdots \quad (2)$

となります。

企業・消費者の負担

 $(2)$式を$(1)$式に代入し、$b_c$をキャンセルすると、

  $T = \dfrac{\varepsilon_s \cdot B_f}{\varepsilon_d} + B_f$

となり、$B_f$について解くと、次の式が得られます。

  $B_f = \left( \dfrac{\varepsilon_d}{\varepsilon_s + \varepsilon_d} \right) T$

 そして、この式を$(1)$式に代入して整理すると、次が得られます。

  $B_c = \left( \dfrac{\varepsilon_s}{\varepsilon_s + \varepsilon_d} \right) T$

 以上から、企業・消費者はそれぞれ、課税単位当たり、次の分だけ従量税の課税を負担することになります。

  企業:$\dfrac{\varepsilon_d}{\varepsilon_s + \varepsilon_d}$ 、 消費者:$\dfrac{\varepsilon_s}{\varepsilon_s + \varepsilon_d} \quad \cdots \quad (3)$

企業・消費者の負担の意味合い

 $(3)$について、その意味合いを考えてみましょう。

 企業は、需要の価格弾力性が大きいほど、課税による負担を多く負うことになります。消費者が価格に対して敏感に需要量を変化させるような状況では、企業の負担が大きくなります。言い換えれば、消費者が価格に敏感なので、企業としては課税分を価格転嫁できずに、企業の負担がでかくなると言えるでしょう。

 逆に、需要の価格弾力性が小さければ、企業は課税による負担をあまり負わず、消費者に価格転嫁できることになります。たばこ税などは分かりやすく、需要の価格弾力性が小さいため、たばこ税を上げても、JTは困ることなく、容易にたばこの値段を上げることができます。

 消費者は、供給の価格弾力性が大きいほど、課税による負担を多く負うことになります。そして逆に、供給の価格弾力性が小さい場合には、消費者は課税による負担をあまり負いません。

参考

  小塩隆士『公共経済学

  

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