はじめに
ミクロ経済学の基本的なモデルとしては、企業は1つの生産要素を用いて生産を行っていたり、生産量に応じた費用関数を定義して、企業は生産を行うとされます。
例えば、後者の場合には、企業の利潤を$\pi$、生産量を$y$、価格を$p$、費用関数を$C(y)$とすると,
数式でいえば、次のような感じです。
$\pi = py \; -\; C(y)$
ただし、企業は複数の生産要素を用いて、生産を行っていることが一般的です。例えば、資本や労働力などが考えられるでしょう。
そこでここでは、完全競争のもとで、企業が複数の生産要素を用いて、1つの財を生産を行っている場合を考えます。
なお、教科書的には、資本と労働力の2つの生産要素を考える場合が多いように思いますが、ここでは$n$種類の生産要素を考えます。
企業行動
企業は$y$を生産していますが、$n$種類の生産要素$x_i \; (i = 1 \. . \. \cdots \. . \. n)$を用いているとして、次のような生産関数を仮定します。
$y =f(x_1 \, , \, \cdots \, , \, x_n)$
そして、それぞれの生産要素の価格を$w_i$とすると、企業の利潤は
$\displaystyle \pi = p f(x_1 \, , \, \cdots \, , \, x_n) \; – \; \sum_{i=1}^n w_i x_i \quad \cdots \quad (1)$
となります。なお、$p$は完全競争下でこの企業はプライステーカーとなるので、所与とされます。
一階条件
この企業が利潤を最大化するとしたとき、$(1)$式を$x_i$で微分し$0$とすると、次にような1階条件を得ることができます。
$f_i(x_1 \, , \, \cdots \, , \, x_n) = \dfrac{w_i}{p} \quad (i = 1 \. . \. \cdots \. . \. n) \quad \cdots \quad (2)$
左辺は生産要素$x_i$の限界生産力を表し、右辺は生産要素$i$の実質価格を表すので、
限界生産力 = 生産要素の実質価格
となるように、企業はそれぞれの生産要素の量を決めることになります。
なお、この部分の結論は、生産要素が1つの場合と同じです。
完全競争下の生産者行動について、生産量を調整するか、生産要素を調整するか
限界代替率
ところで、1階条件である$(2)$式について、次のように変形できます。
$p= \dfrac{f_1}{w_1} = \cdots = \dfrac{f_n}{w_n}$
それぞれの生産要素について、生産要素1円あたりの限界生産力と価格が等しくなることが分かり、
$\dfrac{f_i}{f_j} = \dfrac{w_i}{w_j} \quad (i \neq j)$
となります。$f_i/f_j$は限界変形率であり、これがそれぞれの価格の比と等しくなることが分かります。
すなわち、
限界変形率 = 生産要素価格比
が成り立ちます。