はじめに
ミクロ経済学を学んでいると、契約曲線・コア・競争均衡というものが出てきます。
何だか言っていることは分かるような感じもするけど、どうもよく分かりづらい面があるように思います。
特に、図で説明されると、何となく分かった気がしたり、逆に図で説明されると、分かりにくくなる方もいるでしょう。
そこでここでは、図を説明せずに、変数という視点で説明したいと思います。
なお、図による説明は、次を参考にしてください。
全体像
消費者が2人おり、2つの財があるとします。
このときまずは、エッジワースボックスのゴールを考えましょう。
それは明らかに、交換を行うことで、2人の消費者の財がどうなるかということで。
ただそれを決めるために、考えなければならない変数や関数があります。
1つは効用関数であり、財の消費状況で消費者がどれだけ効用を得るかを考える必要があります。次に、交換を考えるので、交換前の初期賦存量を設定する必要があります。更に交換メカニズムを表現するために、価格というものが必要になります。
これらのことから、効用関数・初期賦存量・価格のもとで、消費者の財の量がどうなるかを、エッジワークボックスで考えています。
・効用関数
・初期賦存量
・価格
↓
財の量
そして、効用関数・初期賦存量・価格について、ルールなどを与えることで、財の量を決めていくことになります。
パレート最適(契約曲線)
効用関数・初期賦存量・価格の3つのうち、効用関数について、ルールを与えましょう。
そのルールは、パレート最適であり、ざっくり言うと
「すべての個人が、他者の効用を引き下げることなく、これ以上効用を改善することがない財の配分の状態」
のことです。
とりあえずは、2人の消費者がいたとき、両者が納得するような財の量の組み合わせを考えましょうということです。
このルールによって、2人の消費者の財の組み合わせが決まることになり、これを「契約曲線」と言います。
違う言い方をすれば、パレート最適というルールを用いることで、2人の消費者が納得するような、財の組み合わせを決めることができます。
上記の例で習えば
○ 効用関数 ⇐ パレート最適
? 初期賦存量
? 価格
↓
財の量
となり、効用関数については、変数としては決まってくることになります。
コア
契約曲線では、2人の消費者が納得するような財の組み合わせなのですが、幅が広すぎます。
このとき、初期賦存量という基準を考えましょう。
契約曲線上で、パレート最適であっても、交換前の初期状態である初期賦存量よりは、効用が下がる状態は、消費者にとって望ましくありません。
そこで、初期賦存量以上の効用を与えるような財の組み合わせを「コア」と言います。
この基準を与えることにより、上記の例でいえば、
○ 効用関数 ⇐ パレート最適
○ 初期賦存量
? 価格
↓
財の量
となり、効用関数と初期賦存量が決まってくることになります。
競争均衡
コアにおいても、まだ色々な組み合わせが考えられます。
最後に価格という基準を与えることで、2人の財の組み合わせを決定することができます。初期賦存量を通るような価格線を描くことで、コア内の契約曲線と交わるところが、2人の消費者にとって、交換により実現される財の組み合わせとなります。
そしてこれを「競争均衡」と言います。
違う言い方をすれば、
これにより、上記の例でいえば、すべての変数や関数を使った形になり、
○ 効用関数 ⇐ パレート最適
○ 初期賦存量
○ 価格
↓
財の量
となります。
コアの説明がない場合
教科書によっては、コアの説明がなかったり、コアの説明が後回しになっていることがあります。
理由としては、競争均衡を求めるにあたり、価格と初期賦存量の2つの変数を使っているからです。
競争均衡のところで説明したように、価格線は、初期賦存量を通過する直線なので、コアの説明なしに、一気に競争均衡の財の組み合わせを求めるていることになります。
上記の例でいえば、
○ 効用関数 ⇐ パレート最適
○ 初期賦存量・価格
↓
財の量
といったところでしょうか。
最後に
上記のような説明で分かりやすくなったかは分かりませんが、個人個人で理解のしやすいパターンが異なると思い、このような説明で、契約曲線・コア・競争均衡の関係を書いてみました。
どうも分からないという方も、次の点を理解していただいたほうがいいでしょう。
・効用関数に対して、パレート最適という基準を追加 ⇒ 契約曲線
・契約曲線について、初期賦存量という基準を追加 ⇒ コア
・コアについて、価格という基準を追加 ⇒ 競争均衡