はじめに
通常の消費者行動では、ある消費者が一定の選好のもと、効用関数が設定され、需要が導き出されるという論理となっています。
ところで、このロジックを逆に考えることは可能でしょうか。
より多く需要され、購入される財は、消費者がその財のより選好をしている、選好を顕示しているというように考えることもできるでしょう。
このような考えのもとに理論が展開されるのが「顕示選好理論」です。
顕示選好理論
財が$x_1$と$x_2$の二財あり、それぞれの価格を$p_1$と$p_2$としましょう。
ある消費者が、財の組み合わせについて、$x_a$と$x_b$という2つの状態に直面しているとし、これらの状態が下図のようになっているとします。
$x_a$は価格線上(厳密には予算制約になりますが)にあり、$x_b$よりも右上にあります。$x_a$にあれば、$x_b$の財の組み合わせも購入可能ですが、$x_a$を選んでいるとすれば、$x_a$をこの消費者はより好ましく思っていると考えることができます。
これに対し、違う価格を考えたときが、次のものです。
$x_b$上に価格線が来ており、価格を考えると、$x_a$は購入可能ではありませんが、お金があれば購入できるので、$x_a$が選好されているには変わりはありません。
そしたら、次のように、価格線の$p_a$上に、$x_a$と$x_b$がある場合はどうでしょうか。
このときには、これだけではどちらの状態が選好されているかは分かりませんが、価格線が$p_b$になったときには、$x_a$は選好されるため、$x_a$のほうが顕示的に選好されていると言えるでしょう。
逆に、次のように$x_a$と$x_b$の状態の位置を変えた場合には、価格線が$p_b$になると、$x_a$は選好されなくなります。
顕示選好の弱公理
以上のような考えのもと、考えられたのが「顕示選好の弱公理」です。
「$x_a$≠$x_b$としたとき、$p_a \cdot x_a \geq p_a \cdot x_b$ならば、$p_b \cdot x_a \geq p_b \cdot x_b$である」
そして、この公理(仮定)のもとに、理論が展開されるのが、顕示選好理論となっています。
参考
武隈愼一『ミクロ経済学』
西村和雄『ミクロ経済学』