概要
ミクロ経済学を学び始めると、最初のほうに出てくるのが「無差別曲線」です。
消費者がxとyの2財を消費するとき、効用について、右下がりの曲線が描けるというものです。
このとき、「無差別」の意味について、言葉自体も難しく、どういうことか理解しにくい部分があると思います。
そこで、以下では、例をあげて、無差別曲線の「無差別」ということについて、説明します。
無差別曲線
そもそも無差別曲線とは何であるかを、改めて理解する必要があります。
無差別曲線とは、ある効用について、財xと財yを消費したときの組み合わせです。
ある効用を満たすにあたり、財xと財yを消費するパターンは、いくつもあり、その消費パターンをつなげたものが無差別曲線です。
ここでポイントは、「効用を一定」にしたときの消費パターンということです。
例えば、次のような効用関数を考えましょう。
$ u(x,y) = xy$
このとき、効用が一定の $ c$ という値で固定されており、$ u(x,y) = c$ とすると、
$ y= \dfrac{c}{x}$
という形になります。
この数式から分かるように、$ x=1$ のときは $ y=c$、$ x=2$ のときは $ y=c/2$ など、いくつものパターンが考えられます。
このように、一定の効用を確保するための財x,yの消費パターンの組み合わせが、無差別曲線というわけです。
そして、一定の効用を確保できれば、どのような消費パターンでも問題はないという点で、「差別がない」ということで「無差別」と言われるわけです。
例
抽象概念なので、分かりにくいと思いますので、お金で考えてみましょう。
お金としては、金額100円をもっていたとしましょう。
ただ、その硬貨としては、次のように、いくつものパターンがあります。
100円玉 = 1枚
50円玉 = 2枚
10円玉 = 10枚 など
このとき、100円の金額について、硬貨としてはいろいろな持ち方がありますが、所詮は価値は100円で同じです。
硬貨が多すぎると面倒などという話もありますが、このような感情を抜きにして考えれば、100円玉1枚持とうが、50円玉2枚持とうが、価値としては違いはなく、その持ち方で「差別はない」「無差別」だということが言えるでしょう。
これが、無差別曲線における「無差別」の意味になります。
そして、この硬貨の持ち方・パターンを描いたのが無差別曲線になります(ただ、硬貨の場合は、100円の金額について、1円玉・5円玉・10円玉・50円玉・100円という5つの財があることになり、整数という制約があるので、グラフ化はできませんが…)
まとめ
無差別曲線の考え自体は、抽象的で分かりにくいかもしれませんが、お金の例で考えると、分かりやすかったのではないでしょうか。
そもそも、無差別曲線という考えは、通常とは逆の見方をしているため、分かりにくいのかもしれません。
通常は、財を消費したときに得られる効用とはどうなのかを考えている(「財⇒効用」)のに対し、無差別曲線ではある効用与えてくれる財の組み合わせはどうか(「効用⇒財」)を考えています。
このような説明があまりないまま、いきなりこのような逆の見方で説明されるため、ややこしくなるのでしょう。
いずれにしても、大事な考えなので、理解しておきましょう。