はじめに
生産関数や効用関数を特定化するにあたり、使われるCES型関数。
例えば、$n$財あるとして、産出量を$Y$、生産要素を$x_i$とすると、CES型生産関数は、次のようになります。
(なお、$a_i$は係数で、$\rho$は定数)
$\displaystyle Y = \left[ \sum_{i=1}^n a_i x_i^{-\rho}\right]^{-1/\rho} \cdots (1)$
そして、CES型関数は英語ではConstant elasticity of substitution functionであり、代替の弾力性が一定である関数となっています。
実際にこのCES型関数において、代替の弾力性を計算するには、どうしたらいいのでしょうか。
実際に計算方法が分からないという方もいると思うので、導出方法を説明します。
導出方法
まずは、代替の弾力性を$\sigma$、1次同次の生産関数を$f$とすると、$i$財と$j$財の代替の弾力性について、
$\displaystyle \sigma = \dfrac{f_i f_j}{Y f_{ij}} \cdots (2)$
という関係があります($f_i$と$f_j$は偏微分、$f_{ij}$は交差偏微分)。
(なお、この式については、「生産要素における代替の弾力性のいくつかの表現」を参考にしてください)
この式を踏まえて、計算していきましょう。
$(1)$式について、$x_i$、$x_j$で偏微分し、更に交差偏微分を求めると、次の式が得られます。
$\displaystyle \dfrac{\partial Y}{\partial x_i} = a_i x_i^{-(\rho + 1)} \left[ \sum_{i=1}^n a_i x_i^{-\rho}\right]^{-(1+\rho)/\rho} $
$\displaystyle \dfrac{\partial Y}{\partial x_j} = a_j x_j^{-(\rho + 1)} \left[ \sum_{i=1}^n a_i x_i^{-\rho}\right]^{-(1+\rho)/\rho} $
$\displaystyle \dfrac{\partial Y}{\partial x_i \partial x_j} = (1 + \rho) a_i x_i^{-(\rho + 1)} a_j x_j^{-(\rho + 1)} \left[ \sum_{i=1}^n a_i x_i^{-\rho}\right]^{-(1+2 \rho)/\rho} $
あとは、これらの式を$(2)$式に代入するだけですが、計算をする上で、このままではごちゃごちゃしているので、
$\displaystyle A = \left[ \sum_{i=1}^n a_i x_i^{-\rho}\right]$
としておけば、計算が楽になります。
$\displaystyle \dfrac{\partial Y}{\partial x_i} = a_i x_i^{-(\rho + 1)} A^{-(1+\rho)/\rho} $
$\displaystyle \dfrac{\partial Y}{\partial x_j} = a_j x_j^{-(\rho + 1)} A^{-(1+\rho)/\rho} $
$\displaystyle \dfrac{\partial Y}{\partial x_i \partial x_j} = (1 + \rho) a_i x_i^{-(\rho + 1)} a_j x_j^{-(\rho + 1)} A^{-(1+2 \rho)/\rho} $
CES型関数は1次同次なので、これらを$(2)$式に代入すると、
$\displaystyle \sigma = \dfrac{(a_i x_i^{-(\rho + 1)} A^{-(1+\rho)/\rho}) \cdot (a_j x_j^{-(\rho + 1)} A^{-(1+\rho)/\rho})}{(A^{-1/\rho}) \cdot ((1 + \rho) a_i x_i^{-(\rho + 1)} a_j x_j^{-(\rho + 1)} A^{-(1+2 \rho)/\rho})}$
から整理すると、
$\displaystyle \sigma = \dfrac{1}{1 + \rho}$
が成り立ちます。
$\rho$は定数であり、どの2種類の財についても、代替の弾力性は一定になることが分かります。
参考
西村和雄『ミクロ経済学』