はじめに
主観的割引率について、一般的な経済学では一定値をとり、現在でも将来でも割引率は変わらないと考えられます。
しかし行動経済学の研究から、将来よりも現在のほうが効用を過度に重視している傾向がみられることが分かりました。いわゆる「現在バイアス」というものですが、これは一般的な経済学の想定とは異なるものです。
そこで、現実の人間に合わせた形で、理論を変える必要があり、生み出されたのが双曲割引モデルです。
この双曲割引モデルについて、数学的にどのような形になるのかを説明したいと思います。
双曲割引モデル
主観的割引率について、比較のため一般的な経済学で用いられる指数型のものについて説明し、その後に、双曲型のものを述べたいと思います。
指数型割引
一般的な経済学では、主観的割引率を$\rho$、$t$期の時間割引率を$D(t)$とすると、次のようになります。
(離散型)
$D(t) = \dfrac{1}{(1 + \rho)^t}$
(連続型)
$D(t) = e^{-\rho t}$
この連続型の数式から、指数型割引と呼ばれています。
双曲型割引
双曲型割引の場合には、次のような式になります($\kappa$は定数)。
$D(t) = \dfrac{1}{1 + \kappa t}$
これにより、指数型割引よりも、より割引が大きくなり、時間と共に指数型割引よりも急激に低くなる形になります。
準双曲型割引
双曲型では、パラメーター$\kappa$の値によって、長期においては、指数型割引の場合よりも値が大きくなる現象が見られます。
そこで、考案されたのが準双曲型割引です。
$D(t) = \alpha \; e^{-\rho t} (0 < \alpha < 1)$ 指数型割引において、$\alpha$というパラメーターがついているものになります。
グラフ
以上について、数式だけでは違いが分かりにくいので、グラフで表すと、次のようになります。
なお、それぞれのパラメーターは次のような数値を用いています。
指数型割引:$\rho = 0.2$
双曲型割引:$\kappa = 1$
準双曲型割引:$\rho = 0.5$、$\alpha = 0.8$
双曲型・準双曲型割引いずれにおいても、指数型割引よりも割引が大きくなっており、現在バイアスが表されていることになります。
参考
川越敏司『「意思決定」の科学』