概要
漸近理論において、収束の考えは重要です。そして、確率収束・分布収束など、いくつかの収束がありますが、その1つである分布収束について、定義はもとより、知っておくと便利な演算のルールについて、まとめました。
分布収束
確率変数$x_n$の確率分布を$F_n$とします。
$n \rightarrow \infty$のとき、確率分布$F_n$が、分布$F$に近づくとき、「分布収束」するといいます。
数式で表すと、任意の$x$について、次のようになります。
$\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty} F_n(x) = F(x)$
なお、数学的には、次のような形で表されることもあります。
$X_n \overset{d}{\longrightarrow} F$ もしくは $ F_n \overset{d}{\longrightarrow} F$
分布収束の演算のルール
確率変数$X_\n$は確率変数$X$に分布収束、確率変数$Y_n$が定数$c$に確率収束するとします。
$X_n \overset{d}{\longrightarrow} X$
$Y_n \overset{p}{\longrightarrow} c$
スラツキーの定理
$X_n \pm Y_n \overset{d}{\longrightarrow} X \pm c$
$X_n Y_n \overset{d}{\longrightarrow} c X \quad (c=0$のとき、$X_n Y_n \overset{p}{\longrightarrow} 0)$
$X_n / Y_n \overset{d}{\longrightarrow} X / c \quad ($ただし$c \neq 0)$
定理1
$g$を連続関数とすると、次が成り立ちます。
$g(X_n) \overset{d}{\longrightarrow} g(X)$
$g(Y_n) \overset{p}{\longrightarrow} g(c)$
定理2
次のような実数列$a_n$があるとします。
$\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty} a_n = \infty$
そして、
$a_n(X_n \; – \; c) \overset{d}{\longrightarrow} X$
が成り立つとします。
このとき、次が成り立ちます。
$a_n(g(X_n) \; – \; g(c)) \overset{d}{\longrightarrow} g'(c) X$
参考
黒住英司『計量経済学』