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シニョリッジ(貨幣発行益)について

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投稿マクロ経済学初級
シニョリッジ(貨幣発行益)について、説明しています。
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シニョリッジ

 もし、政府や中央銀行において、資金がなくなったら、どうしたらいいでしょうか。

 政府や中央銀行は、貨幣や紙幣を無利息で発行できます。例えば、日本においては、1万円札などの紙幣は日本銀行が、500円玉などの硬貨は政府(財務省)が発行しています。

 ですので、貨幣や紙幣を発行すれば、資金を調達できます。

 このように、貨幣や紙幣を発行することで得られる利益を「シニョリッジ」(貨幣発行益、貨幣鋳造収入)と言います。

 現代の日本においては、直接、お金を多く作って、利益を上げようというのは、非現実的な感じもありますが、歴史的には、このようなことは起こっています。

 例えば、歴史の教科書でも出てきたかもしれませんが、江戸時代前期に貨幣改鋳が行われました。勘定奉行だった荻原重秀が、幕府の財政再建を図るため、金貨・銀貨を改鋳、貨幣を鋳造して、幕府は改鋳差益金を得ることができました。

 政府や中央銀行にとっては、貨幣・紙幣を多く発行してシニョリッジを得ることは、資金が増えるので嬉しいことですが、インフレを招く可能性があり、問題ある対策だともされています。

シニョリッジとインフレの関係

 シニョリッジによって、政府や中央銀行は、何らかの支出に使うことになるので、貨幣供給量の増加を物価で割ることで、シニョリッジを定義できます。
 貨幣供給量を$M$、物価水準を$P$とすると、シニョリッジ$S$は、次のようになります。

  $S = \dfrac{\dot{M}}{P} \quad \cdots \quad (1)$

 なお、$\dot{M}$は単位時間当たりの貨幣供給量の増加で、時間を$t$として、$\dot{M} = d M / dt$です。

 この式から、政府や中央銀行は、物価水準を所与とすると、貨幣供給量の増加である$\dot{M}$を多くするほど、シニョリッジを得ることができます。

 ところで、貨幣供給量と物価水準の関係を考えてみます。
 総所得を$Y$とすると、貨幣数量説から、次式が成り立ちます。

  $PY = VM$

 ここで$V$は貨幣の流通速度ですが一定として、単純化のため、(貨幣需要において)定常状態を考えると、総所得$Y$も一定になるので、この式は、

  $\dfrac{\dot{P}}{P} = \dfrac{\dot{M}}{M}$

となり、物価上昇率を$\pi$、貨幣供給量の増加率を$g$とすると、

  $\pi = g \quad \cdots \quad (2)$

となります。
 この式から、貨幣供給量の増加率を大きくなるほど、インフレ率が上昇することが分かります。

 ここで、シニョリッジの式$(1)$に戻り、$(2)$を使うと

  $S = \dfrac{\dot{M}}{P} = \dfrac{\dot{M}}{M} \dfrac{M}{P} = \pi \dfrac{M}{P} \quad \cdots \quad (3)$

となります。

 この式から、シニョリッジは、貨幣の実質残高にインフレ率を掛けたものになります。
 政府や中央銀行は、貨幣の実質残高を所与として、インフレ率が高くなるほど、シニョリッジを多く得ることができることが分かります。

 なお、この$(3)$式は、インフレ税を表わす式となっており、シニョリッジは、インフレ税と等しくなっています。

   インフレ税について

参考

  デビッド・ローマー『上級マクロ経済学

  齊藤誠・岩本康志・太田聰一・柴田章久『マクロ経済学

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