自然失業率
経済が不況になれば、失業率は高まりますが、不況ではなくても、一定率で失業は存在します。
なぜなら、好況で求人倍率が高くても、求職者は職を探していたりし、すぐに職を見つけることができなかったりするからです。また、失業保険を受給していれば、のんびりと職を探す人もいるでしょう。
このように、労働市場において需要と供給が一致していても、摩擦的・構造的に生じる失業率を「自然失業率」です。
定式化
自然失業率は、労働市場における均衡が求められるので、長期的に成立するような失業率とされます。
そのため、自然失業率は、摩擦的・構造的な失業とは言え、ある一定の率になると考えられ、これを定式化します。
人口の増減がないとすれば、失業率が一定であるときには、失業者数は一定になります。しかし、経済においては絶えず、新しく就職できた人もいれば、仕事を辞めて失業者になる人もいます。それぞれの率が一定であるとすると、
失業流入率($v$):仕事を辞めて失業者になる率
失業流出率($e$):失業から抜け出して就職できた人の率
を定義することができます。
そして、仕事を辞めて失業者になる数と失業から抜け出して就職できた人の数が一致すれば、失業者数は一定になるため、就業者を$L$、失業者を$N$とすると、
$v L = e U \quad \cdots \quad (1)$
となります。
ところで、失業率$u$は、
$u =\dfrac{U}{L+U}$
なので、上記の$(1)$式を代入すると、自然失業率$u^*$は
$u^* = \dfrac{U}{L+U} = \dfrac{U}{eU / v + U} = \dfrac{v}{v +e} \quad \cdots \quad (3)$
となります。
すなわち、自然失業率は、失業流入率を失業流入率と失業流出率を足したもので割ったものとなります。
$(3)$式の意味
$(3)$式から、
失業流入率$v$が大きくなれば、自然失業率$u^*$が高まる
失業流出率$e$が大きくなれば、自然失業率$u^*$が低くなる
ことが容易に分かります。
なので、例えば、解雇規制が緩和され、企業が解雇をしやすい状況が生じたり、失業保険が高水準であると、失業流入率は高まり、自然失業率も高くなります。
他方、求職サービスが充実して、より仕事を見つけやすい状況が生じれば、失業流出率が大きくなるので、自然失業率は低下することになります。
参考
齊藤誠・岩本康志・太田聰一・柴田章久『マクロ経済学』