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単純な二期間モデルで、リカードの等価命題(中立命題)を説明

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投稿マクロ経済学初級
マクロ経済学におけるリカードの等価命題(中立命題)について、単純な二期間モデルで説明しています。
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はじめに

 減税などを行うと、景気に刺激があると考えられますが、リカードの等価命題(中立命題)を考えれば、必ずしもそうとは言えません。

 リカードの等価命題とは、

  「公債発行により、減税をしたとしても、経済効果はない」

というものです。これは現在、減税をしても、将来的に増税が予想されるため、効果はないと考えられるからです。

 これを単純な二期間の数式モデルで説明します。

モデル

基本モデル

 個人は2期間生存するものとして、1期目に所得を稼ぎ、その一部を貯蓄し、2期目にはその貯蓄で生活するものとします。

 1期目・2期目の消費を$C_1 \, , \, C_2$、貯蓄を$ S$、所得を$ Y$、利子を$ r$とすると、1期目は所得から貯蓄を除いた分を消費できるので、次のようになります。

  $C_1 = Y \, – \, S \quad \cdots \quad (1)$

 そして、2期目は貯蓄に利子が付いただけ消費できるので、次のようになります。

  $C_2 = (1 + r)S \quad \cdots \quad (2)$

 このとき、$ (1)(2)$式から、$ S$をキャンセルすると、

  $\displaystyle C_1 = Y \, – \, \dfrac{C_2}{1+r} \quad \cdots \quad (3)$

となり、1期目の消費は、所得・2期目の消費・利子率で決まることが分かります。所得や利子率が大きくなれば、1期目の消費は増やすことができ、2期目の消費を増やそうとすれば、1期目の消費を減らすしかないことが分かります。

税率の導入

 次に、減税効果を考えるため、税率を$ t$として、所得税を導入しましょう。
 所得に税金が発生するので、2期目は影響はありませんが、1期目の$ (1)$式は、次のようになります。

  $C_1 = ( 1 – t) Y \, – \, S \quad \cdots \quad (1)’$

 この$ (1)'(2)$を用いると、

  $\displaystyle C_1 = (1 – t)Y \, – \, \dfrac{C_2}{1+r} \quad \cdots \quad (3)’$

が得られます。先ほどの$ (3)$式に比べると、右辺に$ 1-t$が付け加わっています。

 なお、税率がゼロになり、$t=0$となると、この式は、$ (3)$と同じになります。

リカードの等価命題

 減税の効果を明示的に表すため、$(1)’$式をベースに、$\Delta t$だけ税率の引き下げ行われるとします。
 このとき、$(1)’$式は、次のようになります。

  $C_1 = ( 1 – ( t – \Delta t) ) Y \, – \, S \quad \cdots \quad (1)”$

 他方、この税率の引き下げにあたり、その財源を将来の増税で賄うとしましょう。その増税額を$ T$とすると、$ (2)$式は、次のようになります。

  $C_2 = (1 + r)S \, – \, T \quad \cdots \quad (2)’$

 そして、$ (1)”(2)’$の2式を使うと、

  $\displaystyle C_1 = (1 – t + \Delta t)Y \, – \, \dfrac{C_2 + T}{1+r} \quad \cdots \quad (3)”$

となります。

 ここで、政府は1期目の減税分$\Delta t Y$に利子が加わった額が2期目の増税額となるので、次が成立します。

  $( 1 + r ) \Delta t Y = T \quad \cdots \quad (4)$

 この式を$ (3)”$式に代入すると、

  $\displaystyle C_1 = (1 – t + \Delta t)Y \, – \, \dfrac{C_2 + ( 1 + r) \Delta t Y}{1+r}$

となり、整理すると、

  $\displaystyle C_1 = (1 – t)Y \, – \, \dfrac{C_2}{1+r}$

となります。
 この式を見てわかるように、この式には、減税の効果$\Delta t$などがなくなっており、$ (3)’$式と同じになっています。

 つまり、1期目に減税を行っても、将来の増税が予想されれば、消費などの行動には影響を与えないことが分かります。

まとめ

 このリカードの等価命題は、現実問題として、必ず成立しているかと言えば、そうとは言えないかもしれません。

 いくつかのポイントがありますが、その1つとしては、$(4)$式にあるでしょう。
 もう一度、$ (4)$式を見ると、次のような式です。

  $( 1 + r ) \Delta t Y = T$

 そもそも、このような式が成り立つように政府が行動するとは限りません。また、個人の利子率と政府の借入の際の利子率が同じ$r$とは言えないでしょう。

 とはいえ、簡単な数式モデルで説明すると、リカードの等価命題はこんな感じかなと思います。

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