はじめに
価格差別とは、同質な財・サービスにおいて、異なった価格をつけるというものです。
例えば、同じ商品にもかかわらず、大量に商品を買う場合には安くなったり、サービス自体は変わりませんが、大人料金・子供料金などがあったりと、日常生活で当たり前のように見られる現象です。
そして、この価格差別について、産業組織論的には3つの種類があるとされます。
価格差別の種類
第1級価格差別(完全価格差別)
企業が、消費者について知っており、消費者の財・サービスへの支払意思額を完全に知っているときに用いられる価格差別です。
この企業が価格支配力を有し、自ら価格設定ができるならば、個々の消費者に応じた価格をつけることで、企業は利益の最大化を図ることができます。
例えば、需要の価格弾力性が高い消費者に対しては低価格を設定し、需要の価格弾力性が低い消費者に対しては高価格を設定することで、企業は利益を高めることができます。
ただ現実には、企業は消費者について完全に把握することは難しく、コストもかかることから、このような価格差別が行われることは、ほぼないとされています。
また、転売が可能ならば、低価格で財・サービスを購入した消費者は、高価格でも購入する消費者に転売すれば利益を上げることができるので、企業は価格支配力がなくなることになります。
第3級価格差別(市場分割)
第1級価格差別は現実的には難しいことから、現実に行われているものとして、この第3級価格差別があります。
企業は、消費者の性別・年齢・地理的条件などの客観的な情報から、複数の消費者をセグメントし、価格差別を行うというものです。
また、客観的な情報だけではなく、割引クーポンなどを利用して、それを利用する人・しない人という形でセグメントが実施視されることもあります。
上記の第1級価格差別よりも、消費者の区分は荒くなりますが、消費者ごとに価格差別を行うことで、企業はより高い利益を上げることができます。
第2級価格差別
第1級価格差別・第3級価格差別はいずれも、消費者の選好や特徴などから、価格差別を行うとするものですが、この第2級価格差別は、自ら選好を表明させるというものです。
この場合には、財・サービスについて、様々なメニューを用意することで、消費者が好みのメニューを選ぶことになり、自らの選好を表明させることができます。
例えば、小口と大口で料金を変えることで、多くほしい消費者は後者を選択し、そうでなければ前者を選択するため、消費者は自らの選好を表明することになります。
また、固定料金と単位当たり料金をとるという二部料金などでも、このような仕組みは導入可能です。
参考
土井教之『産業組織論入門』
柳川隆・川濵昇編『競争の戦略と政策』