カルテル
カルテルとは、企業が自社の利益を増加させるため、競争を避け、他の企業と協定を結ぶことです。
例えば、分かりやすいのが公共事業の入札に関する談合でしょう。
本来、競争が行われれば、各企業は自社の状況を見て、入札で提示する価格を決めることになりますが、談合では、いくつかの企業が示し合わせて入札で提示する価格を提示することになります。そのときの価格は競争があるときよりも高くなったり、本来は入札結果で受注者が決まるはずが、談合による話し合いで受注者が決まったりします。
このように、カルテルは、財・サービスの購入者にとっては不利益になることから、独占禁止法などで規制が行われています。
カルテルの種類
カルテルには、様々な種類がありますが、その例として、次のようなものがあります。
価格カルテル
カルテル参加企業が、財・サービスの価格を決めるものです。上記の談合は、まさしくこの価格カルテルになります。
純粋に価格を決める場合もありますが、リベート・割戻しという形で、価格カルテルが形成されることもあります。
数量カルテル
カルテル参加企業に、生産量や販売量の調整を行ったり、市場全体の生産量・販売量を割り当てるものを、数量カルテルと言います。
市場全体の生産量を調整することで、市場価格をコントロールし、より多くの利益を上げようとするものです。
販売条件カルテル
販売方法や販売条件などをカルテル参加企業が取り決めるものを販売条件カルテルと言います。
カルテル参加企業にとって、有利な販売方法などを取り決めたりして、企業の利益の増大を狙うものです。
市場分割カルテル
販売エリアや営業エリアなどのカルテル参加企業の間で割り当てるものを市場分割カルテルと言います。
エリアを割り当てることで、地域間における企業の競争を避け、カルテル参加企業はその地域で独占的に行動することができます。
投資カルテル
投資水準について、取り決めを行うことで競争を避けようとするものを投資カルテルと言います。
各企業が自由に投資を行ったとき、それぞれの企業は自社が有利になるように、より多くの投資を行うことになります。しかしそれでは、市場全体としては過大な投資が生じ、個々の企業にとっては過剰投資が生じる可能性が出てきます。これを防ぐために、投資カルテルが行われたりします。
規格カルテル
技術・品質・規格などについて、協定を結ぶことで生じるものを、規格カルテルと言います。
これにより、技術や品質に関して企業間で競争を避けることができます。
また、規格などでカルテルを結ぶことで、新規参入を抑制することが可能となります。ただ規格を作ることで、企業間の取引を促進したり、消費者の保護につながるような面もあります。
カルテルが生じやすい市場
市場によって、カルテルが生じやすい市場とそうではない市場があります。
一般的には、次のような場合にカルテルが生じやすいされます。
企業数が少ない
ある財・サービスについて、それを提供する企業数が少ないと、カルテルが生じやすいとされます。
企業数が少なければ、企業間での意思疎通ややりやすく、カルテル破りもモニタリングしやすくなります。
参入障壁が高い
新規参入がよくある場合には、企業数が多くなったり、企業間での関係形成が難しく、カルテルは形成されにくいとされます。
逆に言えば、参入障壁が高く、新規参入が起こりにくい状況では、企業のメンバーは固定的であり、カルテルは生じやすくなります。
財・サービスが同質的である
財・サービスが差別化されている場合に比べて、財・サービスが同質的であれば、企業間での調整が容易になるため、カルテルが生じやすいとされます。
また、財・サービスが同質的であれば、企業間の競争は激しくなるので、それを避けるため、カルテル形成への誘因が働くことになります。
市場環境の変化が少ない
需要の変動が小さかったり、技術革新が起こりにくいなどといった市場では、不確実性が小さいため、各企業は協調の見通しが立てやすく、カルテルが生じやすいとされます。
例えば、数量カルテルを考えると、販売量が大きく変動するような市場では、どのように数量を調整するのかは難しくなりますが、そうでなければ、数量カルテルは形成しやすくなります。
暗黙の協調
カルテルではありませんが、実質的にはカルテルと同じような状況をもたらすものとして、「暗黙の協調」があります。
これは、企業間でカルテルを結んでいるわけではありませんが、価格を他の企業と同じにしたりするなどして、暗黙的に各企業が協力し合うことを指します。
例えば、大手キャリアの携帯料金などがこの場合に当てはまると思われます。最近では、楽天モバイルの参入があったり、格安SIMなどもありますが、それまでは、NTTドコモ・au・ソフトバンクの3社が市場を握っており、どこも同じような価格・サービスとなっており、暗黙の協調が成立していたと思われます。
参考
土井教之『産業組織論入門』