概要
自然独占企業や公企業では、財・サービスが独占的に提供されるので、競争市場に比べて、価格は高くなってしまいます(このあたりを知りたい方は、「独占市場と完全競争市場の違いをほぼ数式なしで説明します」をご覧ください)。
また、独占的であるので、生産性の向上をする必要はなく、税金などが投入されていたり、生活するのに基盤的な財・サービスであり半強制的にその財・サービスを利用しなければならないにもかかわらず、非効率な運営になりがちです。
これらのことから、これらの企業が、価格を高く設定しないよう、効率的な運営を行うような仕組みが必要となります。
その1つの方法として、「プライス・キャップ制」があります。
この「プライス・キャップ制」について説明するとともに、そのポイントを記載したいと思います。
プライス・キャップ制
プライス・キャップ制とは、簡単に言うと、
「自然独占企業や公企業については、価格設定にあたり、上限を設ける」
というものです。
上限を設けてしまえば、価格は高くはならず、それらの企業が儲けようと思えば、その価格のもとで、効率的な運営を行い、費用を削減するというインセンティブも働きます。
このように書けば、バラ色のようですが、いくつかのポイントがあります。
プライス・キャップ制のポイント
上限設定
上限を設けると言えば簡単ですが、上限をどのぐらいにすればいいのかが問題になります。
通常は、過去の平均的な価格を参考にして、上限を設定することになります。しかしこれでは、物価の変動に対応できませんので、物価上昇率を考慮する必要になります。
複数の財・サービス
自然独占企業や公企業が1つの財・サービスだけを提供しているときには、自然独占企業や公企業は価格設定権があまりありません。ただ、これらの企業が複数の財・サービスを提供しているとき、それらの過去の平均価格をベースに、上限設定を検討することになります。
そうすると、ある財・サービスでは高めの価格、他の財・サービスでは低めの価格など、自然独占企業や公企業は価格戦略も検討できることになります。
もちろん、複数の財・サービスという言い方をしましたが、複数の価格メニューをもっている場合でも、この仕組みは可能です。
生産性向上
上限設定において、上記のように物価上昇率だけを考えるのは正しくありません。
なぜならば、生産性向上のインセンティブが乏しくなる可能性があるからです。もちろん、企業は合理化などを行い、経費を削減すれば、より利益を上げることができるのですが、「現状のまま」でいいと考えた場合は、生産性の向上は見込めません。
特に、公企業などで賃金制度が硬直的な場合には、経費削減などを行い利益を上げても、それが従業員に還元されなければ、現状のままという形がとられる可能性が高くなります。
そこで、上限設定にあたり、一定の価格引き下げ分を導入することで、生産性向上が期待できます。
(もちろん、生産性向上の水準をどの程度にするのかは問題になりますが…)
まとめ
プライス・キャップ制について、ポイントを踏まえて、整理すると、次式で考えることになります。
上限価格 = 平均価格 + 物価上昇率 - 生産性向上率
どうしても、プライス・キャップ制というと、単に上限価格という言葉で終わってしまいますが、物価上昇率・生産性向上率などの仕組みがあり、価格も単一ではなく複数の財・サービスの平均価格であるという点が大事なポイントです。
他にも、自然独占企業や公企業に対する価格設定方法はありますが、プライス・キャップ制はその1つとして、重要です。