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合併の種類と経済効果

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投稿産業組織論初級
企業間の合併の種類や効果について、産業組織論的に説明しています。
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はじめに

 企業間において、結びつきを強める方法として、提携・子会社化などがありますが、その1つの方法として、合併があります。
 この合併について、産業組織論的にその種類と効果について、述べたいと思います。

合併

 合併とは、2以上の企業が1つの企業に統合することです。

 合併方法の分類としては、新設合併・吸収合併などがありますが、合併する分野により、水平合併・垂直合併・混合合併の3つの種類があります。

 公正取引委員会の「企業結合の届出一覧」で、一部の企業結合について公表されていますが、一般には、水平合併が最も多いと言われています。

水平合併

 水平合併とは、同じ市場にある企業同士の合併です。
 例えば、銀行業界はバブル崩壊後、都銀を中心に再編が進んできましたが、この銀行同士の合併が水平合併です。

 水平合併の効果としては、次のものが挙げられます。

①コスト削減

 同じ市場における企業結合であるため、同じような費用構造をしていることが多く、共通している固定費などの削減が期待できます。
 また、規模の経済が発生するような業界であれば、合併により企業規模が大きくなると、よりコスト削減が可能になります。

②市場支配力の強化

 合併により、企業数が減少し、市場支配力は強化されると考えられます。ある市場において、多数の企業が存在するよりも、独占・寡占のほうが、顧客は選択の余地がなくなるためです。また、企業数が少なくなることで、他の企業と(暗黙的なものも含め)協調がしやすくなり、市場支配力は増します。

 ただ、企業数の減少しても、必ずしも市場支配力が強化されるとは限らないとも言われ、「合併のパラドックス」とも言われています。

垂直合併

 垂直合併とは、川上企業と川下企業との合併のように、取引関係にある企業同士による合併です。
 例えば、原材料供給企業と、その原材料を使用して製品を製造しているような企業の間の合併です。

 垂直合併の効果としては、次のものが挙げられます。

①取引費用の削減

 企業間の取引においては、取引における交渉、契約事務、決済など、数々のコストが生じます。
 垂直合併により、このような取引費用の削減ができます。

②二重限界性の回避

 「二重限界性」とは、メーカー・流通業者が独占企業であり、それらが利潤最大化行動を行うと、より一層の過少供給・価格引き上げが行われるというものです。独占企業であるので、供給量や価格をコントロールできるわけですが、メーカー・流通業者いずれも独占企業の場合には、二重にこの独占行動が行われることになります。

 ただ、垂直合併を行うと、別々の独占行動が一本化され、過少供給や価格引き上げなどの問題を少なくすることができます。

③コスト削減

 取引費用の削減以外にも、共通する費用があれば、垂直合併でもコスト削減の効果は期待できます。
 例えば、あるラーメンチェーンが各店舗で麺を製造していた場合を考えると、工場を買収・合併することで、麺製造をその工場に行わせることができ、コスト削減が可能となります。

④規制の回避

 公益事業などの規制が強い事業を行っている企業においては、垂直統合を行うことで、規制当局が費用情報などの入手を困難にしているという見方があります。
 例えば、赤字のバス事業と黒字の水道事業を行っている場合、それぞれ単体では事業の損益が明白です。ただ、この2つがが合併すると、それぞれの事業の損益が相殺されるため、損益が見えにくくなるということが考えられます。

⑤市場支配力の強化

 垂直合併で、取引関係にある企業を買収することで、その事業をコントロールしたり、他の会社との協調行動をとりやすくなるという面があります。

 例えば、メーカーが流通業者を垂直合併すると、他の競合メーカーはその流通業者を利用できなくなり、市場支配力が強まるという状況が考えられます。
 また、合併により費用構造など、その流通業界の詳細な情報を入手することができるため、他の競合メーカーを排除しなくとも、協調的な行動がとりやすくもなります。

混合合併

 混合合併とは、上記の合併以外のもので、「商品拡大型」「地域拡大型」「純粋コングロマリット型」などに分類されます。

 混合合併の効果としては、次のものが挙げられます。

①リスク分散

 どのような企業・業界も収益の変動リスクを抱えています。
 特に、水平合併・垂直合併などはいずれも、現状の自社と関係した企業となるわけですが、全く関係ない企業を合併することで、自社が保有している企業・業界リスクの分散化を図ることができます。

②コスト削減

 本社機能などの共通費の削減はもとより、いわゆる「範囲の経済」が働くことが考えられます。
 例えば、食品メーカーが医薬品メーカーと合併することで、機能性食品の開発がしやすくなったりすることが考えられます。

③市場支配力の強化

 混合合併においては、3つの市場支配力の強化が考えられます。

 1つは、潜在的競争者の排除です。潜在的な参入者と合併することで、競争者を排除することができます。

 2つは、抱き合わせ効果による競争者の排除です。合併により品揃えを増やすことで、抱き合わせ販売などが可能になり、競争者よりも有利に事業を展開できることになります。

 3つは、一般集中度の上昇です。これは、経済全体での集中度が高まることで経済支配力が形成されることです。抽象的でイメージがつきにくいかもしれませんが、ショッピングモールの「楽天」などは、「楽天経済圏」とも言われるように、まさしくこの状況を示しています(ただ、楽天が合併により、このような形にしてきたかは知りませんが)。

実証

 合併の効果については、様々に検証されていますが、一般的には、その効果は疑わしいという結果が多いです。

 その理由として、次のような点が指摘されています。

  • 合併の動機としては単なる規模拡大、経営者の地位保全などであり、企業のパフォーマンス向上が動機になっていない
  • シナジー効果の評価が難しいため、本当の価格よりも高い買収額となっている
  • 企業カルチャーの相違などが障害となる
  •  ただ、合併により、企業の寿命の延長につながっているという研究もあります。

    参考

     土井教之『産業組織論入門

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