はじめに
ある市場において、消費者が需要の価格弾力性が異なる2つのグループに分けられるとします。
そうしたときに、企業としては、それぞれの消費者グループで、違う価格をつけたほうが良いと考えられます。
特に、完全競争市場ではそのようなことはできませんが、独占企業であれば、価格の設定も可能です。
このように、消費者グループにより、違う価格をつけることを「価格差別」(差別価格)と言いますが、独占企業において、価格差別を設定した場合、どのようになるかを説明します。
価格差別
2つの消費者グループ$1$と$2$を考え、独占企業はそれぞれに対して、異なる数量を異なる価格で生産・販売するものとします。
独占企業の利益を$\pi$、消費者グループ$i$への生産量を$x_i$、価格を$p_i(x_i)$、費用関数を$C(x_1 + x_2)$とすると、独占企業は、次のような利潤関数に直面することになります。
$\pi = (p_1(x_1) \cdot x_1 + p_2(x_2) \cdot x_2 \; – \; C(x_1 + x_2)$
独占企業の利潤最大化により、
$\partial \pi / \partial x_i = 0$
であり、消費者グループ$i$に対する限界収入を$MR_i$、限界費用を$MC$とすると、
$MR_i = MC \quad \cdots \quad (1)$
となります。
ここで、
$MR_i = \dfrac{\partial(P_i(x_i) \cdot x_i)}{\partial x_i} = P_i(x_i) + x_i \cdot \dfrac{\partial P_i(x_i)}{\partial x_i} = P(x_i) \left( 1 + \dfrac{\partial P_i(x_i) / P_i(x_i)}{\partial x_i / x_i} \right)$
であり、消費者グループ$i$需要の価格弾力性$\epsilon_i$は、
$\epsilon = \dfrac{\partial x_i / x_i}{\partial P_i(x_i) / P_i(x_i)}$
なので、
$MR_i = P_i(x_i) \left( 1 + \dfrac{1}{\epsilon_i} \right) \quad \cdots \quad (2)$
となります。
利潤最大化条件$(1)$式から、
$MR_1 = MR_2 = MC$
なのですが、$(2)$式から、消費者グループごとに、違う価格をつけるのが最適となります。
言い方を変えれば、需要の価格弾力性が高いグループについては相対的に安い価格、需要の価格弾力性が低いグループについては相対的に高い価格をつけることになります。
また、独占企業の利潤については、価格差別を用いたほうが大きくなります。なぜならば、価格差別を用いない場合は、$p = p_1 = p_2$としたものなので、制約条件をつけて、利潤最大化を行っていることになるからです。
違う言い方をすれば、仮に価格差別を導入することで利潤が下がるならば、そもそも価格差別を導入するインセンティブがなくなるということになります。
これらのことから、独占企業が消費者グループを分けることができれば、価格差別を導入し、消費者グループごとに違う価格をつけて、利潤最大化を図ることになります。
参考
奥野正寛・鈴村興太郎『ミクロ経済学Ⅱ』