はじめに
独占企業や公企業が単一の財・サービスを生産しているときには、その財・サービスの価格だけを考えればいいのですが、独占企業や公企業が複数の財・サービスを生産しているとき、財の価格をどうすればいいかが問題になります。
例えば、独占企業や公企業に大きな固定費用があるときには、その費用の負担を複数の財・サービスにどのように振り分けるかといった問題があるからです。
このとき、複数の財・サービスに関する価格について、「ラムゼー・ルール」というものがあります。
ラムゼー・ルール
ラムゼー・ルールにおいても、独占企業や公企業による死荷重は避けられませんが、利潤をゼロにするという制約のもと、総余剰を最大化しようというものです(これを「ラムゼー最適」と言います)。
独占企業がX財とY財の2つの財を生産しているとします。
このとき、ラムゼー・ルールでは、次のような式が成立するように、価格を決定するというものです。
X財の価格マージン × X財の価格弾力性 = Y財の価格マージン × Y財の価格弾力性
なお、念のため定義しておくと、i財の価格マージンは、次のようなものです。
i財の価格マージン = (i財の価格 - i財の限界費用) ÷ i財の価格
そして、このときの価格を、「ラムゼー価格」(もしくは「ラムゼー料金」)と言います。
上記の式について考えると、次のように解釈されることになります。
価格弾力性の小さい財・サービス : 大きい価格マージンを認める(高い価格を認める)
価格弾力性の大きい財・サービス : 小さい価格マージンを認める(低い価格を認める)
なお、この数学的な導出方法は、「2財におけるラムゼー・ルールの導出方法(数式)」を見てください。
ラムゼー・ルールの問題点
ラムゼー・ルールに従えば、例えば、価格弾力性の小さい財・サービスについては、高い価格を設定することになります。
ただ、価格弾力性の小さい財・サービスは必需品になるので、そのような財・サービスに高価格を設定していいのかという議論があります。また、価格弾力性の小さい財・サービスは、市場支配力も強いので、そのような独占企業に高価格を認めていいのかという問題もあります。
このように、ラムゼー・ルールにおいては、効率性は満たしてはいるのですが、公平性という観点から問題があるとされています。
参考
井堀利宏『公共経済の理論』
奥野正寛・鈴村興太郎『ミクロ経済学Ⅱ』