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情報不完備のときのクールノー・ゲーム(数式)

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投稿ゲーム理論中級
情報不完備のときのクールノー・ゲームについて、数式で説明します。
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クールノー・ゲーム

 クールノー・ゲームとは、2社の企業があり、それぞれが相手の供給量を織り込んで、自社の供給量を決定するというものです。

 クールノー・ゲームでは独占的に価格を決めるのですが、供給量・価格・利潤は、独占と完全競争の間の値になることが知られています。
 詳しく知りたい方は、↓を見てください。

   寡占市場におけるクールノー・ゲームについて(数式)

 ところで、クールノーゲームでは、逆需要関数が分かっているなど、情報完備ゲームとなっていますが、そうでないときはどうなるのでしょうか。

 ここでは、市場規模について、1つの企業が分かっており、もう1つの企業が分かっていない場合のクールノー・ゲームについて、述べたいと思います。

情報不完備のときのクールノー・ゲーム

前提

 企業1と企業2という2つの企業があり、それぞれの供給量を$x_i$、価格を$p$とすると、それぞれの企業は、次のような逆需要関数に、次のような逆需要関数に直面しているとします。

  $p = M^k \; – \; b (x_1 + x_2) \quad (K = H \, , \, L) \quad \cdots \quad (1)$

 ここで、$M^k$は市場規模を表すパラメーターですが、市場規模が大きいときの$M^H$と、市場規模が小さいときの$M^L$の2つの場合があるとします($M^H > M^L$)。

 この逆需要関数のもと、単位費用を$c$とすると、各企業の利潤$pi_i$は、次のようになります。

  $pi_i = p x_i \; – \; c x_i = (M^k \; – \; b (x_1 + x_2)) x_i \; – \; c x_i \quad (i = 1 \, , \, 2) \; (k = H \, , \, L) \quad \cdots \quad (2)$

 次より、企業1は市場規模$M^k$が大きいのか小さいのかについて知っており、企業2は知らないものとして、それぞれの企業の利潤最大化を考えるものとしてます。

企業1の場合(市場規模を知っている)

 $(2)$式より、企業1が利潤最大化を行ったとすると、

  $\dfrac{d \pi_1}{d x_1} = M^k \; – \; 2b x_1 \; – \; b x_2 \; – \; c = 0$

という一階条件から、

  $x_1^k = \dfrac{M^k \; – \; b x_2 \; – \; c}{2b} \quad (k = H \, , \, L) \quad \cdots \quad (3)$

という最適応答関数を得ることができます。

 なお、通常のクールノー・ゲームと異なるのは、市場規模$M^k$によって、供給量が異なってくる点です。
 式から、$M^H > M^L$に注意すると、市場規模が大きい$M^H$のときのほうが、市場規模が小さい$M^L$のときよりも供給量は大きくなります。

企業2の場合(市場規模を知らない)

 企業2においても、企業1と同様に利潤最大化を行うのですが、企業2は市場規模を知りません。
 そこで、市場規模を予測する必要があり、市場規模が大きい確率を$\theta$、市場規模が小さいときの確率を$1 \; – \; \theta$とし、それぞれにおける企業2の利益を$\pi_2^H \, , \, \pi_2^L$とすると、

  $\Pi_2 = \theta \pi_2^H + (1 \; – \; \theta)\pi_2^L$

という式を、企業2は解くことになります。
 $(2)$式から、この式は

  $\Pi_2 = \theta [(M^H \; – \; b (x_1 + x_2)) x_2 \; – \; c x_2] + (1 \; – \; \theta)[(M^L \; – \; b (x_1 + x_2)) x_2 \; – \; c x_2]$

であり、利潤最大化を行うと、

  $\dfrac{d \Pi_2}{d x_2} = \theta [M^H \; – \; b x_1^H \; – \; 2 b x_2 \; – \; c] + (1 \; – \; \theta)[M^H \; – \; b x_1^L \; – \; 2 b x_2 \; – \; c]= 0$

という一階条件から、式を整理すると、

  $x_2 = \dfrac{\theta (M^H \; – \; b x_1^H) + (1 \; – \; \theta)(M^H \; – \; b x_1^L) \; – \; c}{2b} \quad \cdots \quad (4)$

という最適応答関数を得ることができます。

 企業2においては、市場規模は分からないので、市場規模が大きい場合と小さい場合の加重平均で、供給量が決まることになります。

均衡

 $(3)(4)$式を元に、均衡を考えますが、念のため、再掲しておきましょう($(3)$式は$k = H \, , \, L$であり、2本の式があることに注意)。

  $x_1^H = \dfrac{M^H \; – \; b x_2 \; – \; c}{2b}$

  $x_1^L = \dfrac{M^L \; – \; b x_2 \; – \; c}{2b}$

  $x_2 = \dfrac{\theta(M^H \; – \; b x_1^H) + (1 \; – \; \theta)(M^H \; – \; b x_1^L) \; – \; c}{2b}$

 この3本の式から、均衡供給量$x_1^{H*} \, , \, x_1^{L*} \, , \, x_2^*$を求めると、

  $x_1^{H*} = \dfrac{(3 \; -\; \theta)M^H \; – \; (1 \; – \; \theta)M^L \; – \; 2c}{6b}$

  $x_1^{L*} = \dfrac{-\; \theta M^H + (2 + \theta)M^L \; – \; 2c}{6b}$

  $x_2^{*} = \dfrac{\theta M^H + (1 \; – \; \theta)M^L \; – \; c}{3b}$

となります。

 ここで、それぞれの供給量の大小を比較しておきましょう。 
 $M^H > M^L$であることに注意すると、

  $x_1^{H*} \; – \; x_2^{*} = \dfrac{3(1 \; – \; \theta)(M^H\; – \; M^L)}{6b} > 0$

  $x_2^{*} \; – \; x_1^{L*} = \dfrac{3\theta(M^H\; – \; M^L)}{6b} > 0$

であり、

  $x_1^{H*} > x_2^{*} > x_1^{L*}$

となっています。
 市場規模が大きいときの企業1の供給量が最も大きく、次に企業2の供給量、最後は市場規模が小さいときの企業1の供給量となっています。企業2においては、市場規模が分からないので、平均的に供給量を決定するため、市場規模が大きいときと小さいときの間で供給量を決定することなります。

参考

  土橋俊寛『ゲーム理論

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