ニュメレールとは、価値尺度財とも呼ばれるもので、価格の基準となるものです。
価格とは、どんな財・サービスでも、絶対的な価格があるわけではなく、他の財と比較した相対的な価格に過ぎません。
取引がなければ、価格をつける必要もなく、取引があるからこそ、価格が必要になります。そしてそのときに、2つの財の比率がまさしく価格です。
例えば、りんごと米を取引する場合を考えましょう。
りんご5個 = 米250g
で取引が成立する場合、りんご1個を基準にすれば、
① りんご1個 = 米50g
となりますし、逆に、米100gを基準にすれば、
② 米100g = りんこ2個
が成り立ちます。
このように、①の場合にはりんご、②の場合には米を基準としており、基準となるものを「ニュメレール」と言います。
そして、特に理論においては、価格の絶対値ではなく、相対値が重要なので、数式を解きやすくするため、ニュメレールという概念を用いて、式を変形します。
例えば、ミクロ経済学の最初のほうで出てくる、次のような予算式を考えましょう。
$p_x x + p_y y = E$
$x$と$y$の2つの財があり、それぞれの価格は$p_x \, , \, p_y$で、予算を$E$とした場合のものです。
このとき、$p_x \, , \, p_y \, , \, E$は、絶対値はどうでもよく、それぞれの関係だけが重要です。
ですので、$E$について分析する必要がなければ、
$\dfrac{p_x}{E} x + \dfrac{p_y}{E} y = 1$
と式変形し、$E$をニュメレールとして、$E=1$とし、
$p’_x x + p’_y y = 1$
いう式にしても、本質的な議論は変わらないことになります。
同様に、あまりこのような操作は行われませんが、$p_x$について分析する必要がなければ、
$x + \dfrac{p_y}{p_x} y = \dfrac{E}{p_x}$
と式変形し、$p_x$をニュメレールとして、$p_x = 1$とし、
$x + p^{”}_y y = E^{”}$
いう式にしても、問題はないことになります。
以上のように、価格については絶対的なものはなく、他の財との相対的な関係で成立するので、どこに基準を置くかがポイントなります。そして、理論においては、数式的に解きやすくするため、式の変数の1つをニュメレールとして、扱ったりします。
最期に、ところで、
「貨幣があるじゃないか!」
と思うかもしれませんが、貨幣も財の1つと考えると、他の財・サービスと比較したときの価格になります。
言い換えれば、現在の日本では、貨幣が1円がニュメレールとなっています。
最後に、これでもイメージがつかない方は、次のような投稿も書いたので、見てください。