概要
ミクロ経済学を中心に、同次関数というものがよく出てきます。
$k$次同次関数とは、次のような関数$f(\cdot)$があるとします。
$y = f(x_1 , \cdots , x_n)$
この式において、$x_1 , \cdots , x_n$のすべてを$t$倍したときに、どうなるかというものです。
そして、
$f(tx_1 , \cdots , tx_n) = t^k f(x_1 , \cdots , x_n)$
が成立するとき、関数$f(\dot)$は、$k$次同次関数であると言われます。
よくあるのが、
$k=0$のとき、$f(tx_1 , \cdots , tx_n) = f(x_1 , \cdots , x_n)$ (0次同次関数)
$k=1$のとき、$f(tx_1 , \cdots , tx_n) = t f(x_1 , \cdots , x_n)$ (1次同次関数)
の場合でしょう。
色んなところで出てくるので、整理もできていないまま、何となく学んでいるということがあると思います。
改めて、このあたりについて、整理して説明します。
2つのパターンの同次関数
同次関数が登場するとき、実は大きく分けると2つのパターンがあります。
【パターン1】
1つは、方程式を解いていった結果、同次関数の性質を持っていることが分かる場合です。例えば、需要関数や供給関数がこの場合に当てはまります。
【パターン2】
もう1つは、仮定として、同次関数であるとされる場合です(同次関数の性質をもつと仮定される場合です)。例えば、生産関数がこの場合になります。
それぞれの場合について、説明しましょう。
パターン1
例として、需要関数を考えましょう。
$x,y$の2財があるとして、それぞれの価格を$p_x , p_y$、需要関数を$D_x , D_y$、所得を$m$とすると、
$x = D_x(p_x , p_y , m)$
$y = D_y(p_x , p_y , m)$
という式になります。
$p_x , p_y , m$がすべて$t$倍になったとしても、需要量は変わりません。価格も所得も同じだけ上がるので、需要量は変化することはないからです。
$D_x(t p_x , t p_y , tm) = t^0 D_x(p_x , p_y , m) = D_x(p_x , p_y , m)$
$D_y(t p_x , t p_y , t m) = t^0 D_y(p_x , p_y , m) = D_y(p_x , p_y , m)$
この点で、需要関数は0次同次関数であるとされます。
ところで、この需要関数は、消費者が最適に行動した結果得られる関数です。言い換えれば、需要関数自体は0次同次関数であることを想定はしていなかったが、結果として0次同次関数であることが分かったということになります。
パターン2
例として、生産関数を考えましょう。
生産量を$Y$、資本を$K$、労働力を$L$とし、生産関数を$f$とすると、次のようになります。
$Y = f(K , L)$
そして、$K, L$について、それぞれ$t$倍したときに、
$f(t K , t L) = t^k f(K , L)$
となり、$k$次の同次関数となります。そして、$k$の値によって、次のような性質を有します。
$0 \lt k \lt 1$のとき、規模に関して収穫逓減
$k=1$のとき、規模に関して収穫一定(1次同次関数)
$k \gt 1$のとき、規模に関して収穫逓増
ところで、経済モデルを考えるときに、$k$の値は、何らかの方程式を解いた結果、得られるものではありません。あくまでも、生産関数として、仮定して、議論が進められます。
まとめ
同次関数は、経済学において、よく出てきますし、数学的な話になると思います。
ただ、この背景には、2つのパターンがあることに注意しましょう。