費用といった場合、企業が経済活動を行う上で必要とされる原材料や賃金などを思う浮かぶ方が多いでしょう。
確かに、それらは費用で間違いないのですが、費用と言っても、経済学的には少し変わった費用の概念が2つあります。
1つは、機会費用。もう1つは、埋没費用です。
これらについて、説明したいと思います。
機会費用
機会費用とは、次のようなものになります。
(なお、英語ではopportunity costであり、オポチュニティコストとそのまま英語で言われることもあります。)
「違う行動をしていたとした場合に、得られたであろう利益」
利益なのに、費用というのは変な感じをするかもしれませんが、得られたであろう利益を失っているので、費用という言い方になっています。
機会費用の例は、いくらでもあります。
(例)大学に行かずに、高卒で働き始めた場合
高卒で働き始めれば賃金を得られますが、大学に行けばむしろお金がかかってしまいます。
この点から、高卒で働いていたとしたときに得られたであろう賃金は、機会費用です。
(例)お金を投資ではなく現金で持っていた場合
現金をもっていても、利子や配当金を得ることはできません。
しかしもし、そのお金を貯蓄や投資に回していたら、利子や配当金を得られたであろうといえるので、機会費用です。
経済分析を行う上では、通常の費用だけではなく、機会費用も考える必要があり、重要な費用の概念になっています。
なお、経済学だけではなく、法律の世界でも、似たような概念として、「逸失利益」というものがあります。これは、損害賠償などの際に使われる概念で、例えば、交通事故に遭わなければ得ていたであろう賃金などを損害賠償額にするというものです。
埋没費用
埋没費用(サンク費用)とは、次のようなものです。
(なお、英語ではsunk costであり、サンクコストとそのまま英語で言われることもあります。)
「もはや回収できない費用」
費用はすべて回収できないのではと思うかもしれませんが、そうではありません。設備投資などを行ったときにはそれらは費用(厳密には減価償却費)になりますが、それを誰かに売ることで、その費用の一部・全部を回収できる可能性があります。
このように、費用と言っても、回収できない費用と回収できる費用があるので、敢えて回収できない費用を「埋没費用」として定義して、区分けしていることになります。
特に、この埋没費用の概念で重要になるのが投資の評価です。
投資は、将来の収益を見込んでお金を使うことです。この点で、費用ですが、収益を得るためには必要なものと言えます。しかし、投資を行い続けても、将来の収益が見込めない可能性もでてきたりもします。このときには、それまで使っていたお金は、もはや投資回収ができないので、もはや取り戻せない埋没費用となります。
すなわち、投資は当初は収益を期待して行うのですが、
収益が見込める場合 → 必要コスト
収益が見込めなくなった場合 → 埋没費用
となるものと言えます。