はじめに
今年の2022年に、「才能VS運: 成功と失敗におけるランダムの役割」という研究・論文が、イグノーベル賞を受賞しました。
ALESSANDRO PLUCHINO, ALESSIO EMANUELE BIONDO and ANDREA RAPISARDA「TALENT VERSUS LUCK: THE ROLE OF RANDOMNESS IN SUCCESS AND FAILURE」
そして、その大きな1つの結論として、
「最も成功するのは、そこそこ才能があり、運がいい人」
ということです。
才能がある人が最も成功するのではなく、運がよく「そこそこの才能」(中の上程度)がある人が成功するらしいです。
確かに、世の中を見ると、天才が必ずしも成功しているわけではありませんし、運というのは非常に重要だという点で納得です。
特に、自己肯定バイアスを考えると、自分自身は天才ではないが「そこそこの才能がある」と認めたいわけで、自分が最も成功するゾーンにいる人間だというのは、喜ばしい結果ともいえるでしょう。
ただし、この論文については、注意が必要です。
この点について、個人的な見解ですが、説明したいと思います。
注意点
細かくこの論文について説明するのは面倒なので省略しますが、注意点としていくつか。
まずは、あくまでも1つのモデルを使ったシミュレーションということです。現実世界を統計学的にどうだという話ではありません。
ですので、シミュレーション方法によって、いくらでもその結果は変わります。
この論文に従えば、半年ごとに幸運・不運の出来事が発生し、幸運ならば富が倍、不運ならば富が半分になるとなっています。現実にはこのようなことはほぼ起こらないでしょうし、この幸運・不運の発生や富への影響は自由に設定できたりもします。
もう一つは、「才能とは何?」「幸運・不運とは?」など、ある意味、哲学的な要素を含んだ定義の問題です。
才能・能力が重要なのは間違いないでしょうが、人間はすべての分野で同じ才能・能力があるわけではありません。また、ある分野で才能・能力があっても、その分野に進んだ要因は運だったりもします。そうすると、才能というパラメーターは意味がなくなり、結局は運という話になります。
同じように、幸運・不運も人それぞれで捉え方が違います。この論文では、富の量(成功量)が基準となりますが、富が必ずしも幸せをもたらす(幸運)とは限りません。
というこで、ある1つのシミュレーション結果であることは間違いないのですが、正しいかと言えば、そうといえないでしょう。
とはいえ、この論文は間違っているとして、私はこの論文を否定するつもりもありません。
ポイント
たぶんこの論文は、結論はどうでもいい類のものだと思います。
忘れてはならないのが、イグノーベル賞を受賞した論文・研究という点です。
イグノーベル賞は、ノーベル賞のパロディであり、どうでもいい・下らないことに送られる賞です。
この点から、
「運が大事ということを、もっともらしく研究した」
「成功するのはそこそこ才能があり運がいい人という命題を説明するのに、頑張った」
「(結論がでないことについて)一生懸命、研究した」 などなど
といったが、受賞のポイントだと思います。
最後に
この論文で、才能・能力と言っていますが、それは違い概念でも使える話です。
例えば、才能・能力をパチンコに行く頻度と読み替えることもできます。そして、パチンコに行く人を考えれば、
「人よりも若干、パチンコに行く回数が多くて、運のいい人が、パチンコで最も儲かる」
と言うこともできたりもします。
ただ、下らないことを数学・シミュレーションを行っているという点で、
「一流パティシエが、巨大ケーキを作ったら、どうなるのか」
といった要素もあります。
あくまでも、パロディなので、この点は注意する必要があるかなと、個人的には思います。