はじめに
経済学における「均衡」とは、物理学の「平衡」から来た概念で、端的に言えば、
「もうこれ以上、変化がしない状態」
というものです。
一般的な需要と供給の関係で見たら、この2つの線の交わるところが均衡となります。

「世の中に変化しない状態があるのか?」と言われれば、困ってしまうところですが、それはさておき、経済学における均衡について、大きく分けると、3つのポイントがあります。
需要と供給の曲線を例にとりながら、説明したいと思います。
均衡の存在
まずは、均衡というものが存在するかどうかという点です。
経済学においては、ある状態から、別の状態に移行することが分析されますが、その先の向かうべきゴール(目標)がなければ、どうなるかを分析できません。そのゴールにあたるのが、均衡であり、均衡が存在しなければ、分析はできないと言えるでしょう。
違う意味でいえば、経済学では数学がよく使われますが、均衡が存在するかどうかは、解があるかどうかという点にもつながっています。数式モデルにおいて、解がないようなモデルは、使いようがないとも言えます。
経済学で当たり前の需要と曲線について、次のような図だったら、どうでしょうか。
需要は右下がり、供給は右上がりというように、通常の需要と供給を表していますが、交わるところはありません。このことから、この需要と供給においては、均衡は存在しないことになります。

多くの経済学のモデルでは、均衡は当たり前のように存在していることが多いので、存在証明などは行われませんが、不動点定理を使って、均衡解の存在を証明したりします。
この点で、上記のような「世の中に変化しない状態があるのか?」といった哲学的な話とはちょっと違います。
均衡の数
次に、均衡がいくつあるのかが、均衡を考える上で、重要です。
均衡とは、ある状態から別の状態に移行する際のゴールと言いましたが、そのゴールがいくつあるのか、それぞれのゴールはどのようなものなのかが、均衡を捉える上で必要です。
数式でいえば、答えが1つなのか、いくつもあるのといった点と似ています。
上記と同じく、需要と供給について、見てみましょう。
需要の線が変な形をしているので、供給と交わるところが2つあり、複数均衡となっています。

このような複数の均衡があるときは、どのように判断したらいいでしょうか。
均衡が1つの場合(一意的である場合)は、経済モデルとしては、非常にすっきりしており、美しいとも言えます。違う言い方をすれば、答えが1つというのは分かりやすいとも言えます。
半面、均衡が複数あるときには、それはそれで、ある条件下ではAに、別の条件下でBにといったようになり、モデルの面白さを見て取ることもできます。
均衡の安定性
ある状態にあるとき、しっかりと均衡に、その状態が向かうのかといった安定性が、ポイントになります。
均衡が存在していても、そこに向かわなければ、意味がありません。上記で均衡はゴールのようなものだと言いましが、ゴールからどんどん離れていっては困ります。
需要と供給の例でみてみましょう。
需要と供給について、均衡しておらず、点Aにあったとき、均衡に向かえばいいのですが、均衡とは反対で無限大に量が増加する状態では、経済は発散し、均衡は無意味になります。

ですので、経済学では時より、均衡が安定的なのかどうかや安定的であるための条件などが、分析されます。
まとめ
以上のように、経済学での均衡の3つのポイントを述べました。
経済モデルなどを見ると、このような話は出てこないことも多いのですが、暗黙的にこの3つのポイントは抑えられています。そして、この3つのポイントが気になるとき、その部分が分析されたりしています。
教科書レベルではあまり気にすることはないような気もしますが、時折、このような話が出てくるので注意しましょう。