税金の支払い方法
税金の支払い方法には、申告納税制度と源泉徴収制度の2つがあります。
【申告納税制度】
申告納税制度とは、納税義務者が税額を計算し、自ら申告して税金を支払う制度です。
例えば、個人事業主は所得税を、企業は法人税をこの申告納税制度に基づいて、税金を支払っています。
【源泉徴収制度】
所得の支払者が、納税義務者に代わり税を徴収し、それを税務署に納めるという制度です。
例えば、企業においては、従業員は働いて得られた給料について、自ら納税をすることなく、企業がその従業員に代わって、給料から税金を差し引き、それを税務署に納めています。
納税協力費用
税金の支払い方法には、上記のように2つの方法があるわけですが、納税においては、各種の記帳から所得などを計算し、税額の算出するなど、様々な費用がかかります。
自らそれを行えば、手間暇がかかり、時間もとられますし、税理士にお願いすれば、自らは何もしなくてもいいのですが、当然ながら、税理士に報酬を与える必要があります。
このように、申告納税にあたって、金銭的・時間的な様々なコストが発生し、これを「納税協力費用」と言います。
「協力」というのは、若干、違和感があるかもしれませんが、上記のようなコストは、政府が負担してもおかしな話ではないため、そのコストを納税義務者が負担しているという意味でも、納税協力費用と言われます。
納税協力費用の特徴
納税協力費用について、一般的に、次のようなことが言えます。
1つは、納税協力費用は、徴税にあたっての取引費用を誰が負担するのかという問題を表しています。政府が納税協力費用を多く負担すれば、政府の租税行政コストが上昇します。逆に、政府の租税行政コストを減らそうとすれば、納税協力費用は大きくなります。
例えば、政府が簡単に税金を計算してくれるシステムを運用すれば、納税義務者の納税協力費用は減少しますが、政府としてはシステム運用で租税行政コストが増加します。逆に、納税時期になると、税申告に係る書類が企業や個人事業主に送られますが、それらを削減すれば、租税行政コストは下がりますが、納税義務者はそれらの書類を自ら用意する必要があり、納税協力費用は大きくなります。
2つは、上記のように、納税制度には2つの方法があるわけですが、申告納税制度では納税義務者、源泉徴収制度では企業が、納税協力費用を負担していると言えます。
ただ、企業においては、一定の知識を得た人が上記のような業務を行うことになるため、源泉徴収制度のほうが、納税協力費用は小さいと言えるでしょう。
3つは、税制が複雑化すると、納税協力費用も上昇します。より専門的な知識が必要になったり、税額の計算が難しくなったりするからです。課税の原則で、税制は簡素であることが望ましいというものがありますが、その1つとして、この納税協力費用の縮小化が挙げられます。
最後に、納税協力費用が大きければ、脱税の傾向が強化されます。かつて芸能人で、税金を支払っておらず問題になった人がいましたが、この納税協力費用の問題だったのかもしれません。
ただ同時に、脱税が多くなれば、政府はそれを取り締まるため、徴税コストが上昇することになります。
参考
貝塚啓明『財政学』