単一中心都市モデル
前提
単一中心都市モデルにおいて、まずは次のような仮定が置かれます。
・都市は、同質的な平野である
・都市の中心部には、中心業務地区(CBD)があり、企業・オフィスが立地している
・住民はすべてCBDにあるオフィスに通勤しており、通勤費用は都心からの距離と共に増加する
・都市内の土地はすべて都市外の不在地主が所有しており、都市内の企業や住民は土地を賃貸し地代を支払う必要がある
家計
まずは、住民の住宅立地に考えるものとします。
住宅面積を$l$、その他の財・サービスの消費量を$z$とし、住民の効用関数$u$は、次のようになるとします。
$u = u(z \, , \, l) \quad \cdots \quad (1)$
住宅面積や他の財・サービスの消費量が大きいほど、効用は高まるものと考えています。
次に、都心からの距離を$x$とすると、都心から離れるとともに地代$r$は安くなるとし、次のようなな市場地代関数を定義します。
$r = r(x) \quad (r'(x) < 0)$
ここで、所得を$m$、単位当たり交通費を$k$、他の財・サービスの価格を$p$とすると、次のような予算制約式となります。
$p z + r(x) l + kx = m \quad \cdots \quad (2)$
住民は、$(2)$式の予算制約式のもと、効用関数の$(1)$式を最大化するものとすると、
$\dfrac{u_1}{u_2} = \dfrac{p}{r} $
を得ることができます。
この効用最大化のもと、住民は各立地点で支払ってよいという地代(付け値地代)$r^h(x)$を考えます。
$(2)$式から、$r^h(x)$は、次のような勾配をもつ曲線となります。
$\dfrac{d r^h(x)}{d x} = \; – \; \dfrac{k}{l}\quad \cdots \quad (3)$
企業
次に、企業のオフィス立地を考えます。
この企業は、価格$P$、固定費$C$のもと、情報提供サービス$Q$を生産しているとします。
ただ、オフィスの面積$L$に応じた地代$r^o$を支払う必要があります。また、情報提供サービスであり、顔を合わせてサービスを提供する必要があるので、そのための単位当たりトリップ費用$T$が発生するとします。
このとき、この企業の利潤$\pi$は、次のようになります。
$\pi = P Q \; – \; r^o L \; – \; C \; – \; T x Q$
企業は、固定費$C$以外に、オフィス賃料$r^o L$とサービス提供のための費用$T x Q$が発生していることになります。
完全競争のもとでは、利潤$\pi$は$0$になるので、この式から、企業が支払ってよいと考える付け値地代$r^o(x)$を考えることができます。
$r^o(x) = \dfrac{ P Q \; – \; C \; – \; T x Q}{L}$
そして、この付け値地代について、距離$x$との関係から、次のような勾配をもつ付け値地代曲線を得ることができます。
$\dfrac{d r^o(x)}{d x} = \; – \; \dfrac{TQ}{L}\quad \cdots \quad (4)$
市場地代曲線
以上から、$(3)$式の家計の付け値地代曲線と$(4)$式の家計の付け値地代曲線から、この都市において、距離に応じて地代がどうなるかという「市場地代曲線」を得ることができます。
ここで、
$\dfrac{d r^o(x)}{d x} > \dfrac{d r^h(x)}{d x}$
であり、企業による付け値地代曲線のほうが、勾配が大きいとしましょう。
そして、農業地代を$r^A$とすると、横軸を距離$x$、縦軸を地代$r$としたとき、次のような図となります。
企業の付け値地代曲線のほうが勾配が大きいので、都心$o$から距離$x^o$までは、企業の付け値地代のほうが高いため、地主は企業に土地を貸します。次に、距離$x^o$から距離$x^h$までは、農業地代よりも家計の付け値地代のほうが高いため、地主は住民に土地を貸すことになります。
この結果、距離$x^o$までは企業が立地し、中心業務地区(CBD)が形成され、距離$x^o$から距離$x^h$までが住民の居住地となります。
参考
山田浩之・徳岡一幸編『地域経済学入門』