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寡占市場におけるクールノー・ゲームについて(数式)

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投稿ミクロ経済学中級
経済学において、寡占市場におけるクールノー・ゲームというものがあります。このクールノー・ゲームについて、完全競争や独占の場合と比較し、説明したいと思います。
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はじめに

 市場において、企業が数社しかいない寡占状態にあるときには、その市場は完全競争にはならず、企業はプライステーカーとしては行動しないことが予想されます。

 寡占状態において、どのように企業が行動をとり、その結果、供給量や利潤・価格などがどうなるかについて、クールノー・ゲーム(クールノー寡占市場)というものがあります。

 これは、各企業が他企業の供給量を踏まえて、自社の供給量を考えて行動するモデルになっています。

 このクールノー・ゲームについて、説明するとともに、完全競争や独占の場合と比較を行いたいと思います。

クールノー・ゲーム

 企業1・企業2の2社で財が供給されている状態を考えましょう(この場合には、厳密には寡占というより複占ですが)。
 それぞれの企業の供給量を$x_1 \, , \, x_2$とし、財の価格を$p$とします。

 このとき、各企業は次の逆需要関数に直面している場合を考えます。各企業は自社の供給量が価格に対して影響を持つことを知っており、同時に他社の供給量も価格に影響を持っていることも知っている状態です。

  $p = a \; – \; b (x_1 + x_2)$

 この逆需要関数のもと、単位費用を$c$とすると、各企業の利潤$\pi_i$は、次のようになります。

  $\pi_i = p x_i \; – \; c x_i = (a \; – \; b (x_1 + x_2)) x_i \; – \; c x_i \quad (i = 1 \, , \, 2)$

 企業1・企業2それぞれが利潤を最大化すると、

  $\dfrac{d \pi_1}{d x_1} = a \; – \; 2b x_1 \; – \; b x_2 \; – \; c = 0$

  $\dfrac{d \pi_2}{d x_2} = a \; – \; 2b x_2 \; – \; b x_1 \; – \; c = 0$

であり、それぞれの企業の供給量は、次のようになります。

  $x_1 = \dfrac{a \; – \; b x_2 \; – \; c}{2b}$

  $x_2 = \dfrac{a \; – \; b x_1 \; – \; c}{2b}$

 これらの式を見ると、企業は他社の供給量を受けて、自社の供給量も決めていることが分かります。なお、相手の供給量に反応して自社の供給量を決めることから、これらの式を「最適反応関数」と言います。

 費用関数について、この2社は同じなので、供給量も等しくなることから、$x_1 = x_2$が成り立つので、各企業の供給量は次のようになります。

  $x_1^* = x_2^* = \dfrac{a \; – \; c}{3b}$

 そして、市場全体の供給量は

  $x_1^* + x_2^* = \dfrac{2(a \; – \; c)}{3b}$

であり、価格と利潤は、次のようになります。

  $p^* = \dfrac{a + 2c}{3}$

  $\pi_1^* = \pi_2^* = \dfrac{(a \; – \; c)^2}{9b}$

完全競争と独占

 クールノー・ゲームにおける状態がどういうものなのかを見るため、完全競争と独占の場合で比較することを考えます。
 そこで、それぞれの場合には、どのような供給量になるかなどについて、まずは見ていきましょう。

完全競争

 完全競争においては、各企業は逆需要関数を考えずに、プライステーカーとして、行動します。

  $\pi = p x_i \; – \; c x_i \quad (i = 1 \, , \, 2)$

 このとき、逆需要関数を用いると、価格、供給量、利潤は、次のようになります。

  $p^* = c$

  $x^*_1 + x^*_2 = \dfrac{a \; – \; c}{b}$

  $x^*_1 = x^*_2 = \dfrac{a \; – \; c}{2b}$

  $\pi^*_1 = \pi^*_2 = 0$

独占

 独占においては、1社のみで生産が行われるので、$x = x_1 + x_2$として、考えます。
 独占においては、企業は供給量の調整を踏まえて、価格にも影響を与えることができるので、逆需要関数を用いると、

  $\pi = p x \; – \; c x = (a \; – \; b x) x \; – \; c x$

を最大化することになります。

 このとき、生産量・価格・利潤は、次のようになります。

  $x^* = \dfrac{a \; – \; c}{2b}$

  $p^* = \dfrac{a + c}{2}$

  $\pi^* = \dfrac{(a \; – \; c)^2}{4b}$

比較

 以上を踏まえて、クールノー・ゲーム、完全競争、独占の場合を比較しましょう。
 上記から、次のような表にまとめることができます。

クールノー・ゲーム完全競争独占
各企業の供給量$\dfrac{a \; – \; c}{3b}$$\dfrac{a \; – \; c}{2b}$
(市場全体と同じ)
市場全体の供給量$\dfrac{2(a \; – \; c)}{3b}$$\dfrac{a \; – \; c}{b}$$\dfrac{a \; – \; c}{2b}$
価格$\dfrac{a + 2c}{3}$$c$$\dfrac{a + c}{2}$
各企業の利潤$\dfrac{(a \; – \; c)^2}{9b}$$0$$\dfrac{(a \; – \; c)^2}{4b}$

 市場全体の供給量、価格、利潤を比較すると、

  供給量 : 独占 < クールノー・ゲーム < 完全競争

  価 格 : 完全競争 < クールノー・ゲーム < 独占

  利 潤 : 完全競争 < クールノー・ゲーム < 独占

となり、いずれも、クールノー・ゲームは、完全競争と独占の中間的な値になることが分かります。
(なお、独占においては2社分の利潤となっていますが、それを2で割っても、独占の場合のほうが利潤が大きいことに注意してください)

参考

 最後に、ここでは2社の場合を考えましたが、クールノー・ゲームにおいても、企業数が多くなると、完全競争に近くなるという「クールノー極限定理」というものがあります。

 「不完全競争と完全競争が一致するクールノー極限定理(数式)」で説明してますので、こちらも見てください。

参考

  奥野正寛(編著)『ミクロ経済学

  岡田章『ゲーム理論・入門

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