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オストロゴルスキーの逆説

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投稿公共経済学入門
民主制に関する逆説であるオストロゴルスキーの逆説について、説明しています。
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オストロゴルスキーの逆説

 オストロゴルスキーの逆説とは、19~20世紀のロシアの政治思想家であるオストロゴルスキーに由来し、

  「個別政策の決定と、政党や代議制による決定は、大きく異なる可能性がある」

というものです。

 例えば、日本の政治において、自民党が消費税増税を掲げていたとします。消費税の増税について多数決を採ったら反対の人が多いかもしれません。しかし、日本ではこのような直接的に個別イシューの選択が問われることはなく、政党や代議士に投票を行うことになり、選挙では、自民党が勝利を収めるといったものです。

 次のような2つのプロジェクトについて、4つのグループがあり、賛成(○)・中立(△)・反対(×)の立場にあるとします。
 なお、グループの下のパーセントは、それぞれのグループが占める全体に対するシェアです。

グループ1
(10%)
グループ3
(20%)
グループ3
(30%)
グループ4
(40%)
プロジェクトA××
プロジェクトB×

【個別プロジェクトの選択】
 まずは、プロジェクトAについて、考えてみましょう。
 プロジェクトAについては、賛成はグループ1とグループ3、反対はグループ2とグループ4なので、

   賛成 … 10%(グループ1) + 30%(グループ3) = 40%
   反対 … 20%(グループ2) + 40%(グループ4) = 60%

 このことから、反対派が多くなり、プロジェクトAは実施されないことになります。

 次に、プロジェクトBについて、考えてみましょう。
 プロジェクトBについては、賛成はグループ3のみで、反対はグループ4のみです。グループ1とグループ2は中立なので、このプロジェクトについてはどうでもいいと考えており、棄権するとすると

   賛成 … 30%(グループ3) = 30%
   反対 … 40%(グループ4) = 40%

 このことから、反対派が多くなり、プロジェクトBは実施されないことになります。

 以上から、個別プロジェクトについては直接的に投票を行ったときには、A・B共に、実施されないことになります。

【代議士の選択】
 個別プロジェクトではなく、このプロジェクトに対して、2つの立場が異なる代議士αとβを選ぶとします。
 代議士αはいずれかのプロジェクトを実施すると表明しており、代議士βは両方のプロジェクトに反対しているとします。

  代議士α … A・B両方、もしくはいずれかのプロジェクトを推進
  代議士β … 両方のプロジェクトに反対

 このとき、上記の表でそれぞれのグループがどのように投票するかを考えます。
 グループ1からグループ3までは、両方のプロジェクトに反対しているわけではなく、グループ4のみが両方のプロジェクトに反対しています。
 なので、投票が行われると、

  代議士αの得票率 … 10%(グループ1) + 20%(グループ2)+ 30%(グループ3) = 60%
  代議士βの得票率 … 40%(グループ4) = 40%

となり、代議士αのほうが得票率が高いため、代議士αが勝利し、プロジェクトAかBいずれかが実施されることになります。

 すなわち、個別プロジェクトごとに投票が行われたときには、両プロジェクトは否決されますが、代議士の選択という形になると、いずれかのプロジェクトが実施されることになります。

最後に

 このようなパラドックスは、直接民主制と間接民主制の間で起こる可能性が高いとされます。

 ただ、直接民主制であっても、複数のイシューがある中で、1人の大統領や首長を選ぶので、イシューごとの選択と大統領や首長の選択に矛盾が生じる可能性があります。

参考

  林正義・小川光・別所俊一郎『公共経済学

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